現実逃避






























「ひゃー・・・今日もキッツイ・・・」



練習中、佐伯は呟いた。





千葉で古豪と言われ、県大ごときでは、決して負けることが許されない故に、

常に、もやのように自分達を包み込むプレッシャーには慣れっこのはず。





『たまに逃げたくなるんだよな・・・・なんとなく・・・』



と、佐伯は心の中で呟いて、逃亡先を思い浮かべる・・・



唯一無二の心のオアシスである、大好きなその人のこと・・・・





「今日くらい会えないかな・・・」















「休憩」の声とともに、佐伯は部室へ猛ダッシュをした。



ロッカーのバッグの中から携帯を取り出して、メールを送る・・・・



きっと今頃、同じようにテニスをしているであろうその人に・・





『会えない?』その一言を。













丁度、その頃・・・・



「ひぇ〜〜〜っ。今日もキツイにゃーー」



菊丸が叫びながら、不二の背中に飛びついてきた。



「えっ・・・英二・・重いんだけど・・・」




「いいじゃん、も〜〜俺ダメ〜〜。暑いし〜〜」





「そうしてるほうが、余計に暑いと思うけどな?」



苦笑いをしながら、駄々っ子の守をする不二に、お構いなしの菊丸。

体の自由が利かない上に、背中は暑苦しくて、疲れた体に、不二の足取りは重い。

でも、どこか可愛くて、邪険に扱うこともできないまま、不二は背中に

大きな子供を背負ったまま、とぼとぼととコートの脇へと向かうのだった。



「はぁ・・・っ」と不二が溜息をついたそのとき。







「「「「あっ!」」」」



という声と共に、隣のコートからボールが飛んできて、見事に不二の額にヒットしたのだった。





「わぁっ!」



「あっ!」





こっちに向かって飛んできているボールをよけようと不二は動いたのだが、後ろの菊丸が

咄嗟に不二を盾にするように動いた為に、どうしようもなかった。



それほど強くない球だったが、ちょっと擦れて額が紅くなっていた。







「ご・・ごめん!!不二!!」慌てる菊丸に





「しょーがないな・・・・英二ったら・・・」と不二が苦笑いして言った。





「ホントにごめん!!」と言う菊丸に背後から





「菊丸っ!グランド20週!」と手塚の声が響いた。





「きょえーーー」と言いながら菊丸はダッシュしていった。





「不二・・・部室へ行って冷やして来い」と手塚に言われて





「あぁ・・・」



不二は額に当てる冷却シートを取りに、部室へ行った。

そしてついでに・・・と思い、自分のロッカーに置いてる携帯の画面を覗いた。





「あ・・・佐伯・・・」





画面に表示されている、恋人からのメールを見て「ふっ」と微笑んで返事を返す。







『現実逃避?週末まで我慢できないかな?お利口にしてたら、

週末には、現実に戻れなくなるくらいにしてあげるけど?』










東京と千葉は、中学生の二人には、やはり遠くて、そう簡単に行き来はできない。

加えて今は、部活も厳しくて、お互いの体の負担等を考えての不二の返事だった・・・









休憩時間を終えて 、グランドへ戻ろうとしていた佐伯の携帯が、メールの着信を告げた。





「あっ・・・」急いで佐伯は画面を覗く。








不二らしい内容の返事に

『やっぱあいつは冷静。流石だね』と呟いて苦笑いをした。







週末まで、今日を入れて後2日。










「がんばりますか〜!」

佐伯はそう呟いて、部室を後にしたのだった。





























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