男らしく潔く


















「「おかわりっ!」」

ドドンと音を立てて、二本の牛乳瓶がカウンターの上に置かれた。

それと同時に、響く声に回りにいるものが一斉に注目をする。



「俺が先だよ」



「笑わせんな。俺だぜ」



どっちが先でも、どうってことないようなことで、二人が睨みあっていた。





「あれ?二人とも、牛乳が好きだったんだ?」いつから?と

その間をさらりとした空気を漂わせながら、不二が通り過ぎる。



「先輩!」

「不二さん!」



これまた声を合わせたように、その後を追っていく・・・・







「にゃにやってんの?オチビたち・・・」


「赤也のやつ・・・」


今度はテーブルに座っていた菊丸と真田が、同時に不二の後ろをついていくひよこ達を

見ながら呟いた。



「よりによってまた・・・凄いのに気に入られたもんだね。不二の奴」

と、乾はメガネを光らせて言うと



「年下受けするんだ?不二って・・・なぁ?裕太」と佐伯が裕太に話を振った。



「俺が知るわけないでしょ!」拗ねたように返事をすると、裕太は席を立って食堂を出て行った。



「あらら〜、拗ねちゃった。フジコちゃんもフジコちゃんだけど弟くんも相当ブラコンだね」

と、千石はそれを見て楽しそうに笑った。



「余裕あるじゃん。千石」不敵な笑みと共に視線を向ける佐伯に



「年の功ってやつですか?俺は俺のやり方でやるだけだよ」と千石は笑った。



「年の功って・・・同い年じゃんか・・・」菊丸は呆れたように呟いた。



「あのひよこちゃんたちに比べたらだよ〜」









ジュニア選抜の合宿が始まってから早々。

越前と切原の、あからさまに執拗なまでの不二争奪合戦。



分かっているのか分かってないのか、当の不二は相変わらずのつかみ所のなさそうな反応で

のらりくらりと二人に相手をしている。

それに周りの外野たちが、スポット参戦してみたり、傍観して楽しんだりそんな人間模様

が続いていた。



別に身持ちが堅いわけではないが、天然が故のある種の難攻不落の不二周助・・・

テニスの腕前もさることながら、神秘的な奥深い魅力と見目麗しい容姿に

優秀な頭脳、万事にかけて天才的な能力を発揮する彼を狙う者は男女問わず多かった。











「あれ?おかわりいいの?」自分の後ろをにらみ合いながら並んで付いてくる越前と切原に

不二は振り返って尋ねた。



「「いいっす」」



「クスッ・・・仲いいんだね」声をそろえて返事する二人に、不二は楽しそうに笑って言った。



「「いやっ・・・」」とまた同時にいいかけて、二人は言い合いをはじめるのだった。

そしてひとしきりしてふっと気づくと、不二の姿が消えている・・・・



今度こそ出し抜こうと夕食の時間に食堂へ行けば、今度は佐伯と裕太が不二をはさみ、

対面には乾と柳と真田が座っていたのだった。



なかなか二人っきりになるチャンスが巡ってこなくて、越前にしても切原にしても

じれったい思いをしながら過ごしていた。













「不二!」

裕太がラウンジで話しているとそこへ越前と切原が並んでやってきた。





「なんだよ・・・」



「お前の兄貴の好みを教えろ」



「知るかよ・・・第一それが人にモノを尋ねる態度か?」



「隠すなよ!兄弟だろ!」



「兄弟でもしらねぇモンはしらねぇんだよ。」



「なんか知ってんだろーが」



「ったく・・・好みかどうか知らねぇけど、あいつは好き嫌いが激しいからな、

好きなモンは徹底的に好きだけど嫌いなモンは死んでも嫌いだろうな

だいたいお前がそんなこと聞く資格あんのかよ」

あんだけ試合で悪どいことやっときやがって・・・・



最後の一言で立ち尽くす切原を尻目に、不機嫌そうにその場を去ろうとした裕太の後ろから



「あれ〜裕太、そこまで言っちゃぁだめなんじゃない?」佐伯がいつの間にかやってきていた。







「サエさん・・・」裕太も少し言い過ぎたといった顔で佐伯を見た。

そんな裕太と傷ついた様子の切原をフォローするかのように、佐伯は越前達の前に立つと静かに話を始めた。



「二人とも、あいつとプレイしたことあるよな?」



「「はい」」



「どうだった?」



「「上手いと・・・思いました」」



「強いっていうより上手かった・・・」



「上手くて怖かった・・・」



越前と切原がそれぞれに答えた。



「ん。一応良く分かってるみたいだな」と言うと佐伯は



「あいつは常に、自分をいいも悪いも、ギリギリの線まで持っていかないと、手の内なんて

見せてくれやしないぜ?それに、いつもそう感じさせてくれる相手を、あいつは探してる

だからあいつの隣に立ちたいのなら、それだけの男にならないとな・・・」

と言って、敵に花を贈るようなことはしたくないけど・・・と言いながら裕太を連れて

部屋に帰って行った。



残された越前と切原の頭に、佐伯の言葉が何度も何度も繰り返される。

そして二人はお互いを見て、拳をあわせたのだった。









「正々堂々」

「男らしく潔く」



約束にも似た誓いのような言葉を交わし、新たに仕切りなおしをしたのだった。













最高の人を手に入れるため

さらに上を目指して

男を磨け







越前と切原の戦いは始まったばかり・・・・
































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