お願い
夜空を眺めようと、ベランダに二人並んで、しゃがんで空を見上げていた。
「ねぇ・・・不二」
と不意に、千石が隣にいる不二に話しかけた。
「何?どうかした?」
小首を傾げて、不二が千石を覗き込んだ。
「もしさ・・・何かあってさ・・・
俺達の間が、気まずくなったりすることがあっても
絶対、一人で何か決めちゃって、俺の前から居なくなっちゃうってことは
しないでよね・・」
ちょっと気恥ずかしそうに、千石が不二に言った。
いつになく自信なさ気に言う千石に、
「どーしたのさ?急に・・・そんなこと口にして・・・」
と不二が尋ねた。
「だってさ・・・不二ってそうじゃん・・・」
再び空を見上げて言う千石に、きっと今の表情を見られたくないんだろうと
不二は思い、敢えて見ようとせず、同じように空を見上げた。
「どういう意味?」
「もし何かあって、俺が強がってさ、思ってもいないくせに、
終わりにしようとか言ったら、二つ返事で『うん』って言いそう・・」
「クスッ・・・変な千石・・・」
「え?!」と千石が、不二の方を咄嗟に向いたが、
不二の方は、空を見上げたままで、千石の顔を見ようとはしなかった。
しかし、それは、別に怒っているとかいうのではなく、
むしろ今の会話を、楽しんでるようにも見えた。
「そういうこと言うつもりなんだ?」
「そうでなくっても・・・って言ってるじゃん・・・
不二は、泣いてすがって・・・それでも俺のこと欲しがって
追っかけて・・・ってタイプじゃないからさ・・」
きっとね・・・と千石が言った。
「淡白だってことかな?・・・それとも・・・・
薄情だって言いたい?」
チラリと千石のほうを見て、また目線を戻しながら不二が言った。
「そうじゃないけど・・・・けど・・・そうするだろ?」
と言う千石に。
「うん・・・多分。・・・きっと、可愛い女の子にはなれないよ。
これでも、君よりは男っぽい性格だと思ってるから」
と不二は、クスクスと笑いながら言った。
「そうだね・・・俺の方が、泣きすがりそう・・」
苦笑いをして、不二を見る千石に、
不二も視線を千石に落とし、開眼した深い蒼い瞳でじっと
見つめながら
「嘘だ・・・千石も、そんなこと、しないよ」と言った。
「何で?」
自信たっぷりに言う不二に、千石が尋ねると。
「泣きそうでも、ニッコリ笑って、黙って目の前から去っていくだろうね。
っていうか、きっとそうだよ」と不二はきっぱりと答えた。
「嫌だなぁ・・・俺は、悪あがきしまくっても、すがりたいよ・・・」
「けど、やんないだろ?」
全て自分の深いところまで見透かされていると観念した千石は
「俺より、俺のことを良く知ってる不二が言うなら、きっとそうだね・・」と苦笑いをした。
「上手いこと言うね・・・」
と自分に翻弄されながらも、心地よいこの雰囲気を作り出してくれてる
千石を、不二は好きだなぁ・・・と思っていた。
「だからさ・・・」
「何?」
「俺からのお願いなんだけど・・」
「うん」
「どんなつまんないことでもいいから、何でも話してよね・・・・」
「うん・・」
「二人で話し合ってさ・・・いろんなことを乗り越えて行こうよ。
っていうか・・・・乗り越えていきたい・・俺は・・・
ずっとずっと不二と一緒にいたいから・・・・」
不二の性格を理解した上での、精一杯の千石からの言葉に
「うん・・僕もだ・・」と言ってから
「だから、僕からもお願い・・・一人で抱え込んで、
我慢して・・・・・優し過ぎないでいて・・・」と言った。
「え?俺が?」
「そう・・・いつもね・・・人に優しく、自分に厳しい人だから・・・
君は・・・僕といるときくらい、少しは楽にして欲しい」
うっすら微笑みながら言う不二に、
「かいかぶりすぎっしょ・・・それ」
と恥ずかしそうに千石が言った。
「生憎、君の事は・・」
と言いかけた不二に、
「俺よりよく分かってるって?」と千石がかぶせる。
「そう」
「ま、不二がそう言うならね・・・
ってか、お願いされちゃったから・・・気をつけるよ・・・
だからさ・・・一緒にいようね・・」
念を押すように不二に告げる千石は
「うん」と答える不二がたまらなく可愛くて・・・愛しくて・・・
思わずぎゅっと抱きしめた。
「大好きだよ・・」
「僕も・・」
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