可視不可視
あの時俺には確かに見えた。
試合の中、不二の背中で広げられていた黒い羽が
倒れこむアイツを腕にしたとき、真っ白に輝いていたのを・・・
「そんなもの見えるわけないだろ?」千石ったら・・・と不二は笑った。
「だってほんとに見えたんだってば!」必死になって千石は説明をする。
「眼科行ったほうがいいんじゃない?」いい医者紹介しようか?と不二は楽しそうに笑った。
「だって・・・」困った顔の千石に
「それより頭のCT一回撮ったほうがいい?」不二がふふっと微笑んで千石をちらりと見た。
「・・・・」
黙り込む千石に
「どうしたの?」と不二が尋ねると
「ほらまた・・・・」と千石が答えた。
「なにがさ」
「羽」
「え?」
「今のは黒かった・・・・」
はぁ・・っと不二は溜息をついてから
「千石?」と今度は不二は柔らかい笑みで千石を見上げた
「あ・・・」
「今度はなに?」
「白になった・・・」
「もぉーーーーっ!いい加減僕をからかうのやめなよ!」拗ねる不二に
「ごめん・・・だってほんとなんだからさ・・・しょーがないじゃん」やっぱ俺・・・おかしくなったのかな
と千石が落ち込んだように呟いた。
すると、ふわりと千石は柔らかく優しい温もりに包まれる
「えっ・・・・」
「千石・・・・僕は君のことが大好きなただの不二周助だよ。天使でも悪魔でもないから」
と不二は俯く千石を腕に抱いたまま優しく言った。
「不二・・・」
千石はそっと不二の身体に手をまわして抱きしめた。
「ほらね」何もないだろ?と不二がクスっと笑って言う。
「うん」と答えながら千石は何度も不二の背を撫でた。
お互いの額をあわせて二人はふっと笑う。
「もしかして・・・あの時の僕って怖かった?」
公園のベンチで並んで座った不二の笑顔は夕暮れと共に灯が燈った街灯の光を僅かに受けてどこか神秘的だった。
「怖いて言うかさ・・・なんかが降臨してきたみたいでゾクゾクしたんだ・・・
ボールを受けて見えてないはずなのに・・・覚醒した切原のオーラよりも
不二の迫力の方が圧倒的に強くて大きくてさ・・・」
「そっか・・・」不二はそれだけ言って頷いた。
「それが試合の後、倒れこんだあいつを抱きとめて笑ってた顔はいつもの不二でさ・・・
それまでなんでかわからないくらい苦しかった胸がウソみたいに軽くなって・・・」
「うん・・・・」
「ほんとにどの不二も俺のことを好きでいてくれるのかなっぁってさ・・・」
「おセンチになったんだ?」と尋ねる不二に
「ガラにもなくね」と千石は頭をかきながら苦笑いをした。
「ねぇ・・・千石?」優しく語り掛ける不二に
「ん?」と千石は見つめるように顔を上げた
「どの僕も全部不二周助だよ」
「うん・・・分かってるよ」
「でね、その不二周助が好きなのは、君・・・・千石清純だけ」
「ね?」と言う不二を見て、千石の心は泣きそうなくらいキュンとなって、
泣き笑いのような顔で
「うん」と答えた。
「もぉ・・・千石・・・そんな顔して・・・いい男が台無しだよ」優しく言う不二に
「あぁ〜ごめん・・・もうちょっとだけラッキーとハッピーを実感させて」
といって千石はぎゅっと不二を抱き締めた。
「ありがとう・・・千石。こんな僕を一生懸命見ててくれて・・・」
不二は千石に抱きしめられたまま嬉しそうに言った。
「好きだから・・・ね?」とウィンクする千石に
「好きだよ」と不二が答える
静かな時がゆっくり流れ、いつの間にか空には一番星が輝いていた
交わされる口付けは甘く切なく
けれどこれからの二人を誓うように
これからもずっと
他の人には見えないものでも
目の前の大好きなこの人のことを
一生懸命見ていこう・・・
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