ひとでなしの恋



















目の前で繰り広げられている修羅場的な光景に、不二は呆気にとられながら、

呆然とそれを見ていた。





向き合う男と女。





凄い形相に、激しい剣幕でまくしたてる女。



その正面に、苦笑いをしながら立つ男。





参ったなぁ・・・と二人のやりとりを見ながら、

不二はぼんやり考えていた。





人通りが少なくてよかったなぁ・・・とか、

掴み合いになったら、止めたほうがいいのかなぁ・・とか

その場合、どっちを羽交い絞めにしたらいいのか、

やっぱり女性にそれはまずいかなぁとか、

ぼぉーっと考えを巡らせているうちに、面倒になってきて、

とりあえず、この場は帰らせてもらおう・・・

なんて思いついた時だった。





パシィ〜〜ンと乾いた音が響いた。





ふっと見ると、女の張り手が、男の頬に炸裂した後だった。





ふぅ・・・っと溜息をついてから、手形のついた頬に手をあてて、

男はそれまでとは違う至極冷静な顔で

「気が済んだか?」と女に言った。





キッと女は男を睨んで「ひとでなし!もう二度と会うこともないでしょうね」

と言ってから、ふっと不二の方を向いて、



「可愛い人ね・・・清純が溺れるのも分かるけど・・・気をつけなさい。

この男がいい顔してるのは、ほんの最初だけだから・・・」

そう言って、その場を去って言った。







「ごめん、えらいとこ見せちゃったね」千石は苦笑いをして、不二に言った。



「綺麗な人だな。年上?」



「うん・・6才上」



「へぇー、流石、千石。キャパ広いや」



「あんまり嬉しくない褒め言葉だね」



「褒めてるはずないさ。あの人、僕のこと、女の子と思ってるみたいだったし」



笑いながらそう言った不二は、女の後ろ姿を見ながら



「もったいないこと、したんじゃなかったのか?」と言った。



「いいよ・・もぉ・・・だから、俺には不二がいればそれだけでいいって、いつも言ってるでしょ?」



「よく言うな。あんな綺麗なお姉さんと修羅場展開しといて」

としらっと横目で、千石を見ながら不二が言った。



「あれが最後。切れなかった人・・・

不二に告白してから、そういうの一切、切ってるから・・・ほんとだよ」

いつになく真摯に言う千石の顔を見ながら



「それもいつもの手?最初だけなんだって?さっき、あの人言ってたな・・・」

と不二が悪戯っぽく言った。



「ひどいなぁ・・・」泣きそうな顔の千石に



「へぇー、千石もそんな顔するんだ」と言った。



「敵わないな・・・」千石は呟いてから

「けど、多かれ少なかれ、不二もこういうの経験したことあるでしょ?」と言った。



「お生憎様、僕はそんなヘマはしない。いつもニッコリ笑顔と握手でサヨウナラ。

後腐れなんて一つも無いよ」と不二がスパッと言った。



「・・・」だまって不二を見ている千石に



「なんなら、実体験してみる?」と言う不二に。



「勘弁してよ・・・俺、不二と別れたくないよ」と千石が言った。



「なーんだ・・・そうなの?勉強になるのになぁ」と不二が言う。



「ホント、不二って黒いとこあるよね」と千石が恨めしそうに言った。



「そんなこんなを含めて好きなんじゃなかったの?」



「はぁ・・・はい、そうです」と言ってから

「よかった・・・不二が怒ってなさそうで・・・」と千石が呟いた。



「当たり前だろ?僕を誰だと思ってるんだ?意外と君より男らしかったりするよ」

と不二が言った。



「参ったね」苦笑いをする千石に



「僕は、満足はさせてあげるけど、退屈はさせてあげない」と不敵に笑って言った。













「そんな不二を満足させられるように頑張るよ・・」と千石は呟くように言った。













「そうだな。期待してる。ひとでなしさん」と言って不二が笑った。













「もぉ・・・それ、禁句だよ!!不二!」









二人は、顔を見合わせて、声を上げて笑ったのだった。






















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