肩を並べて



















「まだまだだね・・・」











ランキング戦を1ゲームも落とすことなく勝ち抜いた越前は

自分のいたDブロックの最終戦の相手にいつもの口癖を呟いていた。



「うぅ・・・」

圧倒的な強さを見せつけられてある種の恐怖を感じた相手は崩れ落ちるように言葉もなくその場に座り込んだのだった。









「相変わらず手厳しいね」ベンチから立ち上がり、柔らかな微笑と共にタオルを手渡す愛しい人にラケットを預けた越前は

腰掛ながら彼が傍にいることに満足そうにしながら

「周助がそういうこと言わないよ」と隣に腰を下ろした不二の額をチョコンと人差し指で優しくこついた。

クスっ・・・と笑う不二からドリンクを受け取った越前は蕩けそうな優しい笑顔を不二に向けた・・・







「今日は休みになったんでしょ?」既に肩を並べるくらいの高さにまで身長が伸びた越前はすぐ横で

「うん。よくわかったね」と言う不二と同じ高さで目線を絡ませるのだった。







「ねぇ・・・どうして分かったの?高等部の練習予定・・・。今日は急遽だったのにさ・・

 連絡しようと思ったらリョーマの方から先にメールがきたから驚いちゃった・・・」

と相変わらず綺麗な微笑を向ける不二に越前はドキリとしながら



「女の子達が文句言っててうるさかったからね・・」と答えた



「え?」ほへっとしている不二に



「あっちは情報早いから・・」と越前が言う



「ふぅ〜ん・・・で?何で文句なのさ」首を傾げて覗き込んでくるように向けられる不二の愛くるしい顔に



『ヤバイよ・・・周助・・・可愛らし過ぎ・・・』と越前は心の中で呟きながら

「高等部の誰かさんの練習姿が見れないからに決まってんじゃん」と答えた



「ふ〜ん・・・誰だろ・・・」とまるで他人事のように言う不二に



「あのね・・・アンタね・・・」と言いかけた越前は「ほぇ?」と言う愛くるしい目の前の恋人がこのテのことに関して

極端に鈍かったことを思い出して、苦笑いしながらこれ以上は何を言っても無駄だと思い

『それはアンタなんだよ!!』という言葉を飲み込んだのだった。











まったりとした雰囲気もつかの間・・不二をみかけた生徒によって

「高等部の不二さんが男テニのコートに・・」という声が瞬く間に広がっていく・・・



その様子をみた越前がみるみる不機嫌になり、怒ったようなムッとした表情になるのだった。

そんな越前の眉間に指を当てて「怖いの怖いの飛んでいけっ・・・」と不二が悪戯っぽく笑みを見せながら言う。

不二のそんな可愛い笑顔を見て、越前は「はぁ・・・っ」と諦め混じりの大きな溜息をつくのだった。





すると部長の桃城を見つけた不二はすっと立ち上がり

「桃!今日は突然悪かったね。そろそろ失礼するね」と言うと越前の方を向いて

「今日は呼んでくれてありがとう。また後で連絡するね、じゃぁね。リョーマ」と寂しそうに言った。

そんな不二を見て越前はくだらないことで腹を立ててしまったことを後悔した。



それを見ていた桃城は『っつたく・・・』と越前の方をむいて溜息をつくと「お前・・Dブロックはもう結果でてるだろ

今日はもういいから帰れ・・・」とコートを去っていく不二の背を見ながら言った。



「え?」と言う越前に



「騒がしくなる前に部室でも行ってろ!」

ったく・・・他のコートはまだまだ試合やってんだからな!と言ってコートに戻って行った。



越前は走って不二に追いつくと驚く不二の腕を掴んで大急ぎで部室へと飛び込んだ。





部室にいる間、二人は無言だった・・・越前は黙って黙々と着替えをし、不二はベンチに腰掛けて

懐かしい部屋の中をぼんやり見つめていたのだった。









「あれ?いないじゃない・・・」と不二目当てに集まった女子生徒達が文句を言いながら去って行く・・・・









騒ぎが一段落したころ、着替えが済んだ越前は不二の前に立つと肩に手を置いて、身をかがめて

おもむろに口付けをしてからぎゅっとその体を抱きしめて「ごめん・・・」と言った



「リョーマ・・・」少し驚いた様子の不二に



「折角一緒にいられるのに・・・・俺・・・ガキみたいだった・・」越前の切なそうな言葉に

不二は何も言わずだまって越前の背に手を回したのだった。





不二の首に顔を埋めて、不二を抱きしめて、ほんのり香る不二の匂いを吸い込んで、

越前は驚くくらい落ち着いていく自分を感じた。















「俺も・・・まだまだッスね・・・」

二人並んで帰り道、目の前に伸びる同じ長さの2本の影を見ながら越前はポツリと呟いた



「え?」と聞き取れなかった不二が越前に尋ねる。



「何でもないッス・・・」少し俯きながら照れ隠しをするように越前が答えた。











「この分だと、リョーマを見上げなくちゃいけなくなるのもそう遠くないね」

やんわり微笑んだ不二が言う



「え?」と越前が不二を見た。



「身長もだけど・・・・テニスも・・・これから君は僕よりうんと高いところに行くんだろうね」

包み込むような優しい笑顔で誇らしそうに不二は言った。



「周助といっしょにね」そう言って越前は不二の手を握った。



手を繋いできた越前を「え?」と見つめる不二に掠めるだけのキスをして「身長は仕方ないけどね」

と越前はウィンクしながら言った。



頬染めて俯く不二が愛しくて越前の想いは胸から溢れそうだった。



「愛してる・・周助。絶対離さないから」そう言って繋いだ手に力を入れて自分の体にピタリと不二を引き寄せた。

不二は幸せそうに微笑んで越前に身を寄せる。



細い二つの影が太い一つの影になる・・・・





繋いだ手と触れ合う肩から不二の温もりを感じながら



『体だけじゃくて・・・心も早く周助と肩を並べるようにならなきゃ・・・』と

越前は心の中で呟いたのだった・・・・
























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