二人だけの秘密の思い出
「ちょっ・・・リョーマ」
「え?何?」
「いくらなんでも・・・」
「しっ!」
「もっ・・・」
「いいから・・・早く!」
「んんっ・・・・」
チュっと音がして重なっていた、影が離れた。
「はい、よくできました」
「もぉ・・・」
「そんな顔しても、かわいいだけ、全然、俺には堪えないよ」
「どうしてさ・・・」
「ほら。次行くよ!」
「えっ・・・まだ?」
「何言ってんの?できるときに、できるとこから、できるだけ!って言ったでしょ?」
「冗談だろ・・・」
戸惑う不二を引きずり回して、校内のあらゆるところで、越前はキスをしていた。
「こんなに、一日にたくさん回っても、印象に残らないんじゃないのか?」
「ご心配なく」
「ごちゃごちゃになるなら、意味ないと思うけど?」
放課後の教室をあっちこっち回りながら、少し息を切らせた不二が越前に言った
「大丈夫。俺は全部覚えてるから」自信満々で越前は答えた。
「あ、そ。・・・」
「そ。俺の周助への思いの強さを侮らないでよ」
真摯な瞳で見つめられて、不二はぱっと頬を染めた
「言うな・・・」
俯く不二の顎に手をあてて、「ほら・・・顔上げて?」と越前は言った。
「んっ・・・」そして、不二の唇に、自分それをゆっくり重ねた。
「ここは、これで、ちょっとまた特別に思い出ができたね。その顔・・・凄いかわいいよ。周助」
音楽室の中をぐるりと見渡して、最後に目の前の不二を見つめ、越前は幸せそうに言った。
黒い大きな瞳に見つめられて、不二は胸がぎゅっとしめつけられる思いだった・・・
そう・・・もうすぐ、自分はこの校舎から離れていく・・・やがて訪れる「卒業」という日に
「周助?」
心配そうに越前が不二を顔を覗き込んだ。
「ん?」
ふんわり微笑んで答える不二を見て、越前もふんわり微笑んで
「今日は頑張ったからね・・・このくらいにしておこうか」と言った。
事の発端は1週間前・・・
3年生達が引退をしてすぐのころだった。。。
図書委員の越前が、当番だったその日、誰も居ない図書館で、カウンターを挟んで二人は話をしていた。
「ねぇ・・・ちゃんと部活、顔出してよね」
毎日一緒に帰っていた越前は、それができなくなるのが嫌だった。
「毎日は無理だ・・・」仕方ないと言う不二に、
「だって高校、うちンとこだったら勉強なんてしなくてもいいじゃん。もともと学年で3本の
指に入るくらいの天才のくせに・・・・」拗ねる越前
「可愛くない言い方しないよ・・・」困ったように不二が言った。
「俺は・・・置いていかれるんだよ・・・あんたに」ポツリと言う越前の言葉が、不二の胸に突き刺さる。
「リョーマ・・・・」
「周助のことも分かるから・・・無理は言わないけど・・・
できるだけ部活・・・顔出してよ・・・一緒に帰ろうよ・・・」
「分かった・・・ごめん・・・リョーマ」
「好きだから・・・俺・・・ほんと周助のこと・・・好きだから」
「あぁ・・・」
そして、越前はそっと不二にキスをした。
「ここではたくさん、キスした気がするな・・・」ポツリと言う不二に
「委員だったし・・・俺・・・来年も、図書委員しようかな」
「え?」
「だってさ、思い出がいっぱいじゃん・・・」
「確かにね・・・思い出に残るね・・・ここは」
と、不意に何かを思いついたかのように越前は
「だったら、いまから思い出作ればいいんだ」と言った。
「え?」
「この校舎中に・・・・俺と周助だけの・・・秘密の思い出だよ」
そして始まった、二人だけの思い出作り作戦・・・
「この分だと、周助の卒業までに、ノルマ果たせそうだな」帰り道、越前は嬉しそうに言った。
「っていうか、2学期中に終わっちゃうんじゃない?」
「特に!ってとこは、何度も回るの!」言い切る越前に、不二はぷっと吹き出した。
「周助?」
「ごめんごめん・・・参ったよ・・・・君には・・」
「だって、2年分だからね・・・」
「そうだね・・・」
「ごめん。周助」突然、越前が不二に言った。
「ん?どうしたの?」
「俺ばっかり・・・」と言いかけた越前の唇にすっと指をあてて、
「いいよ。気にしないで。僕は待つのも嫌いじゃないから・・・それに先輩面して来れるしね・・・」
と不二は言った。
「でも、僕が待ってるからって、絶対上に上がることはない。
日本に、君の敵が居なくなった時は、君は躊躇なく、飛び立っていかなきゃいけない」
続けて不二が越前に言った。
「周助・・・」
「離れていても・・・君が僕を必要としていてくれる限り、僕は君を想って待てるから」
「一緒には・・・きてくれないの?」
「リョーマ・・・」
「いいよ。今答えなくても。その時になったら、俺、周助が嫌がっても何やってても
無理やりでも連れて行くから・・・だから覚悟だけしといて」
真剣な越前の言葉に、不二はニッコリと微笑んで
「分かった・・・楽しみに待ってるよ」といった
「とりあえず。頑張って、今のところのノルマ果たさなきゃ」前を向いて綺麗に微笑む不二に
「うん。明日もがんばろう!」越前は答えたのだった・・・・
ブラウザの「戻る」でbackしてください