狙った獲物
あのクソ親父が行けっていうから・・・
色々考えるのも面倒臭いし、テニスがそこそこなら、別にいいかって決めた学校だった。
所詮、俺は俺だから、誰の為でもなく、自分のためにするんだから・・・
全然、期待もなにもしてなかった。
案の定、入部早々、一才や二才、年が上だの下だのとかいって、威張る奴等や
俺がチビだからって馬鹿にしてくる、それこそバカが多くて、ゲンナリしたりもした・・・
けど
あのレギュラーって呼ばれてる連中は・・・同じクラブかと思うくらいで・・・
やっと、マトモなのに出会ったって感じだった・・・
そして
その中に・・・あの人がいたんだ・・・
何故か、気になって気になって仕方なかった。
気づいたら俺は、あの人を追っていた。
俺より背は高いけど・・明らかに、他の連中に埋もれてる感じで
細い線の華奢な体つき・・・どっから見ても、女みたいだった。
染めてんのかと思うくらいの茶髪に、濃い蒼い目して、あれでハーフじゃないんだから
ほんと、見た目からでも不思議な人
テニスは、そんな大したテニスでもなかった。
いつだって本気でやらないから・・・
それを上手く隠してたし・・
だから、あの頃は、なんで他の先輩達が、あんないつもあの人に、まとわりついてんだろうって。。。
本人も、ヘラヘラ笑ってるだけだったし
マネージャーでいいじゃんって、思ったくらいだった
けど、いっつも部長とタメはるくらいギャラリーとかいて・・・
いかにも、いいとこの坊ちゃんですって感じで
声かけて、優雅な身のこなしで、難なく裁いていくのを見て・・・・
「何なんだ!あれ?」って何度、心の中で愚痴ったか分かりやしない。
ムカつくけど気になって・・・
気になるけどムカついて・・・
地区大会のときだったかな・・・
会場内の他校の様子を見て回るのに、部長があの人を連れて行った。
普通、副部長の大石先輩だろ?行くのは・・・って思ったのに
当然のようにあの人を呼びつけて、あの人もそれに着いていった。
周りの全然それが当然みたいに・・・
そして、だれも入れない雰囲気ができてた・・・
そういや、他の連中がいってた・・・
『あの人は、レギュラー陣にとっても、誰にとっても特別な存在なんだ』って・・・
居ても害はないのに、居ないと自分に害をきたす・・・
そして、俺は自覚した
あの人のことが好きなんだって・・・
だから決めたんだ。あの人を手に入れるって・・
絶対、狙った獲物ははずさないって・・・
「リョーマ?」
自分の腕の中で、眠っていたはずの愛しい人が、目を覚ませて声をかけてきた
「ん?起きたの?」
そう言いながら、越前はサラサラの薄茶の髪をやさしく指で梳いた
「何考えてた?」
全てを見透かしたような瞳に見上げられて、ドキリとする
「別に・・」
「クスッ・・・嘘・・・・・なんかまた、横シマなことかな?」
「なんだよそれ・・・・横シマって・・」拗ねたように言う越前に
「だって、リョーマだから」と不二はしらっと答えた
「周助だけには言われたくない」
「それはまた・・・随分だな」何を言っても、不二はまったく堪えてない
「アンタが一番タチ悪いよ」
「クスッ・・・」
はぁっ・・・・と溜息をついてから越前はポツリと「思い出してた」と言った
「ん?」
「周助と出会った頃のこと・・・」
「たいしてテニスも強くないのに、女みたいにヘラヘラしてて、訳わかんないやつだったって?」
悪戯っぽい瞳で『どぉ?』とばかりに言う不二に、思わず越前は黙りこんでしまった。
「クスクス・・・・図星?」という不二に
「いつも部長に囲われてるみたいで、気に入らなかった」不二の言葉に答えずに、越前はそれだけを
ポツリと言った。
「今は、君に囲われてるけど?」
「今だけじゃなくて、これからずっと。永遠に」越前は不二に言った。
「へぇ・・・凄いこと言うね」
「当然でしょ?あんただけはね・・・何があっても譲れない」
きっぱりと決意を固めたように、越前は言い切った。
「クスッ・・・いいよ・・・それが君の望みなら・・・」
そう言って、不二は越前の首に手を回して、ぎゅっと身を寄せた。
「うん・・・愛してる・・周助」
「僕も・・・あっ・・・・んっ」
目の前の美しい不二の体を貪りながら、越前は心の中で呟く
狙った獲物は確かに
手に入れた
けど
その獲物の餌食になったのは
俺
それも
自ら望んで・・・
俺は、この人に心囚われたまま
この人を捉え続ける・・・・
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