溺愛ジレンマ



(これはオフ本『溺愛complex』の番外編です)
















「何だ?これは・・・」

「さっき届いた・・・彩菜さんからのプレゼントだって・・・」




会社の駐車場に留められていた、真っ白の外車・・・
太陽の光を受け、それは新車の輝きを放っていた。
その輝きはまさに、高級車の高級グレードそのもので、
その前に佇む周助に、戻ってくるのが遅いと、手塚が様子を見に、やってきたのだった。





「さっきの呼び出しは、これか?」

「うん・・・少し早いけど、誕生日プレゼントだって・・・」

「はぁ?」

手塚は、想定外の出来事に、思わず素っ頓狂な声を上げた。


「お前・・・免許を取ったことを、あいつに話したのか?」

「うん・・・っていうか、教習所の世話をしてくれたのは佐伯だったから・・・」

「・・・・そうだった・・・・」手塚は頭を抱えて黙り込んだ。






「たかが車じゃない」


「え?」と、周助が目を向けると、さっき、見送ったはずの彩菜が、車から降りて
こちらへ向かってきていたのだった。



「どこの馬鹿が、メルセデスのSLを、たかが車呼ばわりするんだ!」
お前の金銭感覚は、狂ってる・・・と手塚は、彩菜に向かって言った。


「あー、もぉ、煩い親父ね。シッシ・・・」
彩菜は負けじと、鬱陶しそうに手塚に手を振った。


「何だと?」


「周助が免許を取ったっていうから、お祝い兼ねて来たんじゃない、
それを迷惑みたいに・・・貴方が車を買って上げないから、代わりに私が
持ってきただけでしょ?それをそんな、眉間に皺寄せて、ウザイったら
ありゃしないわ」


「免許取りたての奴を、こんな車に乗せるわけにはいかん!」


「あら、お言葉ですけどね。ちょっとやそっとぶつけたって、この車だったらビクとも
しなくてよ。貴方の大切な周助をきっちり守れると思いますけど?」


「お前の発想は極端すぎるんだ!」


「あ〜〜もぉ・・・可愛そうにっ!」彩菜は周助をぎゅっと抱きしめた。


「おいっ!!」


手塚は慌てて周助から、彩菜を引き剥がそうとした。


「大丈夫よ。ちゃんと保険も何もかも、周助の名義で入ってるから。それに、もし、
何かあっても、ちゃんと私が面倒みるからね」


「おいっ!いい加減にしろ」手塚は無理やり彩菜を、周助から引き離した。


「煩いわね、いちいち私に指図をするのはよしてくれない?」


「煩いのはお前だ。大体、何をわざわざ引き返してきたんだ」


「あ、そうそう。もう一つあったのよ。『あなた』にじゃなく!周助に」

そう言いながら、彩菜は手にしていた封筒を周助に渡した。


「え?」


「鎌倉の別荘の鍵よ。あなたに合わせて、全部、調度し直したから。
今度の休みにでも、それ乗って行ってみて頂戴。初めてのツーリングには
調度いいくらいの距離でしょ?」


「ええっ!」
周助は、その日、二度目の驚愕の声を上げたのだった。



「何だと!」それは手塚にとっても同じくらいの驚きだった。


「何よ、あなたにどうこう言われる筋合いはなくてよ。いちいちキャンキャン煩いのよ。
これは全部、周助へのプレゼントなんですからね」

ぴしゃりと言う彩菜には、流石の手塚もやり込められてしまうのだった。


「まったく・・・」口負けしたを悔しそうに、手塚は彩菜を睨んで呟いたのだった。


「自分だけが、周助を溺愛する権利を持っていると勘違いしないことね。」


何を言っても無駄・・・手塚は諦めのため息をついたのだった。



「じゃぁね、周助。また連絡するわ。虎次郎と一緒に買い物でも行きましょう」
チュッと彩菜は周助の頬にキスをすると、愛車である真っ赤なフェラーリに
乗り込んで、去っていったのだった。






「相変わらずだね・・・」
苦笑いをしながら手塚を見上げる周助に、
「とりあえず・・・帰えってからだ・・・」と、手塚はがっくりと疲れたように言ったのだった。









「やることがあの方らしいですね」事の次第を聞いた乾は苦笑いをした。


「まったく・・・人の話を聞く耳というものが、あいつには無い・・・」

手塚はため息と共に呟いた。



学生時代からそうだったが、前の一件依頼、輪をかけて彩菜にはやり込められるように
なっていた。

仕事面ではそうでもないのだが、こと、周助のことに関しては、
彩菜も譲るということをしなかった。

母親の情というものを欠落したまま、幼年期を過ごしてきた周助が、
彩菜に懐くのは当たり前のことで、それを無理に制限することも手塚にはできずにいた。




周助が関わると、人が変わったように大人げのなくなる
手塚かのため息を聞きながら、乾は






いつもくらいとは言わなくても、彼の事に関して、
もう少しこの人も、大人になれればいいんだけどね・・・と

決して口にすることはできない一言を、心の中で呟いたのだった。























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