たまには














アイシテル 





「んな陳腐な台詞、俺に吐かせてぇわけ?」 





天蓬にせがまれて、下界から持って帰った恋愛小説・・・ 

興味もくそもないのに、お気に入りの天蓬の膝枕で 
転寝でもしようとしていた捲簾に、聞かせるかのように 
天蓬は、声を出しながらそれを読み始めた 



ちょっと切なく甘いストーリー。 

悪くない展開に、捲簾は黙って聞いていたが 
主人公が恋人に向かって「好き」だとか「アイシテル」だとか 
事あるごとに告げるのが、なんだか耳について仕方ないと 
思ったときだった・・・ 




パタン・・・ 





ストーリーはともかく 、
心地よく響いていた天蓬の声が止まり、 
頭上で本が閉じられる空気の流を感じ 、
捲簾はふっと、目線を真っ直ぐ上の天蓬へと向けた。 







「・・・・そういえば貴方、最近何も言いませんね」 

天蓬の言葉に捲簾は「んだよ」と言った。 





「なし崩し傾向ですよねぇ」 

捲簾の問いに答えずに、天蓬は言葉を続ける。 






「だからさ〜何がだよ」体を起こして、天蓬と並んでソファに 
もたれながら、顔だけを彼に向けて捲簾は言った。 
なんとなく天蓬が、何を欲しがっているのか分かってはいたのだが 
自分的に、なし崩しで天蓬を抱いているわけではないし、 
それは天蓬にも分かっていると思っていたから 
ちょっと心外だという気も、しないわけでもなかった。 





「んな陳腐な台詞、俺に吐かせてぇわけ?」 
捲簾はポツリと言った。 


「たまには、そんな陳腐な台詞に酔ってみたいと思う時だってあるんですよ」 
天蓬は、遠くを見つめるように、視線を漂わせながら少し寂しそうな顔をした。 





『ちっ・・・反則だぜ?』 
その儚げな色香に、捲簾は心の中で舌打ちをした。 






ふわっと天蓬を包む込むように抱きしめると、捲簾は耳元で 
優しく囁いた。 








「愛してる・・・ 
 誰よりも 
 何よりも 
  
 俺の全てで 
 これからも 
 お前だけを愛するから 

 俺の傍から離れるんじゃねぇ・・」 









はっ・・・・と 
天蓬が潤んだ瞳で捲簾を見上げる。 

ふっと微笑んで、捲簾は天蓬の零れそうな涙を舌で掬った。 


「しょっぺぇ・・・」 
苦笑いをしてから、もう一度天蓬をぎゅっと抱きしめて 

「軍事オタクな元帥さまでも、おセンチになることがあるんだな」 
と優しい口調で言った。 

「あなた限定です」天蓬は静かに答えた。 

「光栄だね」 
捲簾は嬉しそうに微笑むと、天蓬の顎に手をかけてクィと 
引き上げ、薄く柔らかな唇に自分のそれを重ねた。 


「んっ・・・」天蓬の上げる甘い声に、全身が痺れる感覚を覚えながら、捲簾は天蓬に溺れていった 








自分より階級が上のくせに 
自分の副官になりたがって 
そこに居心地よさそうにおさまっている人 
狂おしいほど愛しい人・・・ 








言葉になんかしねぇでも 
俺の心は決まってるって 
お前が一番知ってるっしょ? 




んでもまぁ 
お前が欲しいっつーなら 
もういいっていうまで 
お前が望むものを 
あげてぇって思うわけ・・・ 



こんな俺って 
結構きちゃってるって思わねぇ? 









天蓬の体を貪りながら捲簾は囁き続けた。 

天蓬は答える代わりに喘ぎ声を上げ、締め付ける・・・ 


「あぁっ・・・」 

同時に昇り詰めて果てた後、 



もう一度 
アイシテルという言葉と共に捲簾は天蓬に口付けた。 


蕩けるような笑みを向けて天蓬は 

ありがとうございます 
僕も貴方を愛してます 

と告げた。 




なるほどね・・・ 
と捲簾は思った 

俺から聞きたかったのと 
自分も言いたかったのか 

可愛いヤツ 


たまにはンなのもいいかもな・・・ 

と 






















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