moonlight jealousy
「ん?」
夜更けに賭場から戻ってきた悟浄は入り口のドアが施錠されていないことに
驚きながらそっと扉を開けた。
中から光が零れてくることもなく、ドアの向こうは外と同じ薄暗い闇が
広がっていた。
几帳面な同居人が戸締りを忘れることなんか今までなかったのに・・・
何かあったのかとも思うが、清潔にいつものように整頓された室内を見て
それもなさそうだとか短い時間に悟浄の頭の中をいろんな思いが巡るのだった。
「おかえりなさい」
「ん?」
玄関からは少しばかり死角になってる窓の方から聞きなれた優しい声が響く。
「あぁ・・・ただいま」と返しながらその方へ視線を向けると降り注ぐ月の光を浴びながら
キレイに微笑む人が自分を出迎えてくれる姿が目に映った。
「先に寝てなかったのか?」後ろ手にドアを閉めて、きちんと施錠しながら
悟浄は開け放たれたドアに凭れながら夜風に身をゆだねている八戒の傍に行った。
「あんまりお月様が綺麗だったんで・・・」と答える八戒は相変わらず柔らかな
微笑を称えたまま・・・
「飲みますか?」とテーブルの上に置かれているグラスを目で指した。
グラスの中には発砲している液体・・・上部に白い層ができていた。
「ん?あぁ・・・そうだな」悟浄はそれを手にしてゆっくりとグラスの中身を
口に含みながら八戒の隣へと寄っていった。
八戒の手にも同じグラスが持たれていて、中のビールは半分ほどに減っていた。
「もしかして待っててくれたとか?」僅かな期待を胸に八戒に尋ねてみると
「いつ帰って来るとも知れない鉄砲弾を待つようなおバカな真似はしませんよ」
手厳しい返事が返ってきた。
『だったらこのグラスは何なんだよ』思わず口にしてしまいそうだったが、
悟浄はそれをぐっと飲み込んで「なーんだそうなのかよ〜」とおどけて言ったのだった。
「綺麗ですよ」月を眺めて言う八戒を見て何故か悟浄は落ち着かなかった。
自分には向けられたことがないような穏やかでうっとりするような表情で八戒に
見上げてもらっている月を・・・生まれて初めて忌々しいと想った瞬間だった。
よく晴れた空に輝く満月を帰り道すがら何度か見上げてはいた・・・・
確かに綺麗な月だった
けれど今の自分にとって感嘆するほどの美しさを持っているのは目の前の八戒ただ一人。
「そうだな・・・綺麗だ・・・お前がな」
気が付けば悟浄はボソリボソリと口にしていたのだった。
「何言ってんですか?そういうことは綺麗なお姉さんに言わないと・・・・でしょ?」
八戒は苦笑いしながら悟浄に言った。
「綺麗な綺麗な薄幸美人じゃん・・・」悟浄は言いながら自分のグラスと八戒のグラスを
ドアの桟に置き、八戒をぐっと抱き寄せた。
「失礼ですね・・・」女性に比喩された八戒は少しムッとしたような顔を悟浄に向けるが
抱きしめられることを嫌がるような素振りは見せなかった。
「怒った顔も素敵。」ウィンクしながら悟浄はお構いなしに言った。
「もぉっ・・・」貴方って人は・・・と言いながら八戒は苦笑いをした。
腕の中の八戒に悟浄の鼓動は早まり、ウブなガキのような心境に陥る。
八戒限定の自らの精神状態の意外な状況にココロの中で悟浄は戸惑いながら苦笑いをするのだった。
『これって、やっぱ重症ってこと?』問いかける自分に『分かってんでしょ?』ともう一人の
自分が答える。
同じ状況になる度に繰り返される同じ自問自答・・・
『沙悟浄ともあろうモンがな・・・』行き着く先の結論は自分が身も心も八戒という人間に
捕らわれて嵌って貪欲に欲しているということを痛感すること。
ふっと鼻腔を擽る柔らかな匂いにふっと我に戻ると悟浄は腕の中の八戒に目をやった。
「やっぱ綺麗じゃん・・・月なんかよりずっと・・・」ついでに言うと星よりもさと
悟浄は八戒に告げた。
歯の浮くような悟浄からの台詞に八戒は戸惑ったような顔を浮かべながら
僅かに頬を赤らめて悟浄を見上げていた。
『あぁ〜、反則じゃねぇ?その顔・・・たまんねぇな・・・』
悟浄は一点に集まってくる熱に照れたような苦笑いをするのだった。
「何考えてるんですか?」すかさず八戒が悟浄にツッコミを入れる。
「ん?そりゃぁあ、あれよ・・・こういうこと」と言いながら悟浄は
自身のそこを八戒に擦り付けた。
「やっ・・・悟浄っ」擦りつけながら一層に固さを増す悟浄のそこの感触に
八戒は頬の色を一層濃くしながら慌てて身じろいだ。
「どうしてそうなるんですか」両手で悟浄にがっちり拘束されたように抱かれて
身動きの取れない八戒はそういいながら足掻いた。
「どうしてって言われてもな・・・しょうがないじゃん。八戒さん限定の症状だから」
悪ぶれる風もなく悟浄は言った。
「そういう台詞は女の人限定にしてください」
「あら、信じてないの?」
「信じられますか?」
「だって俺がお姉さん抱くのはお姉さんが欲情して俺を煽るから、溜まったモン
吐き出すためにヤルだけ。でもお前には俺が欲情すんの。俺がお前を欲しくて
堪らなくなんの。それにお前とこうなっちゃってから俺は八戒さん一筋じゃんか」
信じられないなんて御無体じゃない?と悟浄は言って八戒をじっと見つめた。
甘えたような伺うような真剣な眼差し。
悟浄が八戒限定に見せる表情に八戒は悟浄の真実を痛感させられる。
「反則です・・・」八戒は全てを許す笑みを浮かべて静かに言った。
「ん?」何が?と悟浄が言う。
「そんな顔して言うなんて・・・」やや俯き加減に言う八戒に悟浄の庇護欲がそそられる。
「それならおアイコってことで・・・」悟浄は優しく微笑みながら八戒の顎を引き上げて
そっと唇を重ねた。
「んふっ・・・」零れる八戒の声が甘くて悟浄はもっと欲しくなる。
角度を変えて唇を貪ればそれはより深いキスへの誘い。
八戒がゆっくりと唇を開けば待ちきれなかったとばかりに悟浄は舌を滑り込ませた。
歯列も舌も溢れる唾液も何もかもが甘美でそれに溺れることが悟浄にとって何よりの
快感となっていく。
ぎゅっと自分にしがみつく八戒が愛しい
もっと腰を引き寄せると形付き始めた八戒のそこに煽られる。
身も心も蕩けさせて骨抜きにされるほどの痺れを与える八戒に悟浄は自ら望んで
溺れていくのだった。
立ったまま向かい合って細くしなやかな足を片方担ぎ上げながら激しく突き上げを
悟浄は繰り返した。
「くっ・・・」必死に声を殺す八戒に
「こんな夜中に誰も通らないけど?」と悟浄は意地悪っぽく言った。
「僕がっ・・・や・・・・なんですっ」首を仰け反らせて必死に悟浄にすがりつきながら
八戒は言った。
月明かりに照らされた八戒の半裸の痴態はこれ以上ないと思えるほど妖艶で扇情的だった。
夢中で腰を振りながら悟浄は自分をいう存在を八戒の体の奥から刻み込むように
何度も何度も深く激しく貪った。
まるで月に見せ付けるように・・・・
「あっ・・・」儚い声とともに達する八戒を強く抱きしめながら悟浄もそれを追うように
果てたのだった。
八戒の白い内腿を流れ落ちる己の劣情の証に悟浄は「悪い・・・」中出し・・・と
すまなさそうに言った。
八戒はふっと微笑むと悟浄の首に手を回し、「動けないのでお風呂まで連れてっていただけますか?」
と言った。
悟浄にそんなことは気にしないでという言葉を含めて・・・
「あぁ・・・もち。」ウィンクしながら悟浄は嬉しそうに八戒を抱き上げた。
チュっ・・・と軽くキスをして「愛してる」と悟浄は八戒に言った。
「知ってます」八戒は答えると今度は自分から悟浄にキスをした。
「僕も・・・」と言う八戒に
「知ってる。俺も」と悟浄は満足そうに答えた。
『やっぱ重症』
ふっと笑う悟浄を見て
「なんですか?」八戒が言った。
「いや・・・なんでもねぇよ」
「だったらいいです」
八戒は悟浄に全てを委ねる・・・・
八戒の心を惹くものはたとえおまえさんでも許さねぇ・・・
悟浄の呟きが月まで聞こえたのかどうか・・・
月は相変わらず優しい光を降らせているだけだった
ブラウザの「戻る」でbackしてください