貴方といふ人
「何やってんの?お前・・・」
ノックをしても返事がない扉を開けた途端、いつもの如く雪崩れ落ちてくる本の波が収まってから、
それを上手くまたぎながら、部屋へと入っていった捲簾は、手早く片付けて律儀にまたドアを閉めると、
本棚で阻まれて、行くことができなかった隣の部屋への道ができているのを、
不思議に思いながら奥へ進んでいった。
そして、目線の先の様子に立ち止まったままキョトンとした顔で呟いた。
「見て分かりませんか」部屋の持ち主は、捲簾を見もしないで言った。
「分かんねぇから聞いてんだけどな〜」捲簾は、苦笑いしながら言った。
「本を読んでるんですよ」
「それは分かってるってば」
「はぁ?」呆れたような声を上げて、天蓬はやっと顔を上げ、捲簾の方を向いた。
「ほら・・・それ・・・」そう言って捲簾は、天蓬の頭を指差した。
「あぁ・・・これですか・・・やっぱりおかしいですかね?」
天蓬はそう言いながら、後ろで括った髪の束に手を当てた。
「いんや・・・おかしかねぇけどさ・・・」言いながら捲簾は天蓬のすぐ近くまで寄っていく。
「昨夜、髪を乾かさずに寝たんですよ。それがまぁ、朝起きてみたらびっくりするくらい
見事な寝癖がついちゃってましてね・・・仕方なく括ってみました」
ふふっ・・・と綺麗な笑みを見せる天蓬に、捲簾は珍しいなと言った。
「今夜の宴には軍服着用なんですよね?ここ2〜3日髪洗ってませんでしたから・・・」
面倒くさいですけど、仕方ないと思ってたのに、えらい目にあいました・・・
「お前、寝相ひでぇもんな・・・」ニヤリと笑う捲簾に、天蓬はちょっと拗ねたような顔をして
「あなたに言われたくありません」と言った。
「俺が抱いてねぇと、ベッドから落ちるくせに?」悪戯っぽい目つきで捲簾は言った。
「あなたが僕をベッドから押し出すからです」
「そんなはずないっしょ?どんだけ暴れたって俺の上からお前を落としたことねぇんだぜ。俺は」
捲簾の含みのある不敵な笑顔にさっと天蓬の頬が染まった。
「あなたって人は・・・昼間っからどうして、そっちのほうへ話を持って行こうとするんですか!」
「俺だからじゃん〜」そんな俺に惚れてンのはどなたでしたっけ?と捲簾はふっと笑った。
「自意識過剰の下半身男っ!」声を上げて立ち上がった天蓬を、捲簾はさっと抱きしめた。
「お待ちしてました」
はぁ?と振り向く天蓬の唇を、捲簾はさっと塞いだ。
「んっ・・・」身じろぐ天蓬の腰をしっかりと固定するように腕を回し、もう片方の手で
露になっている項を撫で上げた。
「捲・・簾・・・」甘い声を上げる天蓬の耳たぶを甘噛みすると、捲簾は唇をずらして
白い項にかぶりついた。
「ひゃっ・・・」声を上げて仰け反る天蓬に、お構いなしでそのまま捲簾はチュっときつく吸い上げた。
「あぁっ・・・・」
「ンな色っぽい格好してるお前がいけないつーのっ」
捲簾はニンマリと、憎めない笑みをむけて、天蓬の腰の辺りに自分の股間を押し当てた。
それはしっかりと布の下で硬く熱く主張していた。
「こんな時間から節操のない人ですね・・・」諦めたように天蓬は呟くと、捲簾の首に手を回して
「後の予定があるんですから・・・生ではやめて下さいね?」と小悪魔チックな笑みと共に言った。
「分かってるって・・・」と捲簾はウィンクしてから「相変わらず腰にくる笑顔してくれるじゃん〜」
と嬉しそうに言って天蓬を抱きかかえた。
「あなた限定ですよ」天蓬はそう言ってから、捲簾の頬にキスをした。
「ん〜〜っ。嬉しいこと言ってくれるね〜。こんな時間から俺、はりきっちゃうよ?」
「お好きにしてください・・・」
「んじゃ、ま、お言葉に甘えて・・・・」
夜の宴の席で、やたら気だるそうな天蓬元帥の垂れ流しフェロモンに
途中で席を立つ者がやたら多い中、
一人捲簾だけが、得意気な笑みを終始浮かべていたとか・・・・
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