千不二de最遊記(悟浄×八戒)A

















「何?どうしたの?」胸騒ぎを抑えるように、千石はわざと不二に軽い口調で尋ねた。 




「君には随分と世話になったね・・・」

千石とは対照的に、不二は至極真面目な口調で、しみじみと呟いた。


 

「なっ・・・なんだよ・・・改まってさ・・・」 

「ここを出ることにした。もっと早く決めることができていたら・・・

君にこんなに迷惑をかけずにすんだのに・・・申し訳なかったと思ってる」 

「え?ちょっと待ってって、俺がいつ、迷惑かけられたって言った?」思わず千石は立ち上がった。 

「いいんだ」不二は千石の言うことを受け付けようとはしなかった。 

「不二っ!」 

「毎晩毎晩、こんな生活を続けてちゃ、いくら君が元気だっていっても、そのうち倒れてしまう」 

「え?」 

「今日・・・手塚に会ったんだ・・・」 

「手塚に?」 

「君のことを話した。なぜなんだろうって・・・自分の家なのにさ・・・なぜ、帰って来ないのかって」 

うな垂れる不二を見て、千石はがっくりと椅子に腰を下ろした。 

「で?」 

「『帰りたくない理由が家にあるからだろう』って・・・」 

千石は返事ができないまま、えっ・・・と不二を見た。 

「僕がここにいることによって、君の今までの生活ペースは変わってしまっただろう?

僕がいるから、女の人だって連れてくることもできない、だからといって、君は僕に気を使って、

外泊もできずに、こんな夜更けに戻ってくるんだ・・・」 



『あいつ!』千石は心の中で叫んだ。 




「明日、手塚が来る。新しく住むところは彼が手配してくれることになっているから。

迎えに来てくれたら、すぐに出て行くよ・・・いろいろとすまなかったね」 


「・・・どうするんだよ・・・」 

自分に対してとも、不二に対してとでもとれるような言葉を千石は口走っていた。

顔からは引きつったような笑顔も消え、恐ろしくシビアで、思いつめたような真剣さが漂っていた。



 

「こんな僕でも、役に立てるところがある・・・そこで働くよ」 

「何をやるんだ?」 

「孤児院で・・・」言いかけて、不二は暫く震える唇を噛んだ。 




脳裏に、忘れたくても忘れることができない過去がよみがえっていくのだ。

泣き出しそうな自分をぐっと堪えて、不二は、「子供達に勉強を教えるんだ」

とできうる限りの平静を装って答えた。 






千石には、そんな不二の心の奥が痛いほど、手に取るように分かる・・・
 
そんなに、泣きそうな自分を抑えこんでまで・・・ 

辛い思い出に苛まれる日々がまたやって来るのを承知の上で・・・

不二が決断をしなくてはいけないほど追い詰められた状況にいたとは、千石は思ってもいなかった。



 

いや 

気付かないほど、現実逃避することに自分自身が必死だったのだ・・・ 







「何で黙って決めたんだ!」八つ当たりにも似た感情が千石を叫ばせた。 

「・・・ごめん・・・」不二はそれだけを言うと、酷く傷ついた顔をして、俯いてしまった。 

「勝手に俺のこともわかりもしないで・・・」

沸き起こる憤りをぶつける先を、千石自身、見つけられないまま、闇雲に感情だけが暴走を続けた


。 

「夜が明けるまでの辛抱だから・・・ごめんっ」とうとう、不二は涙を散らしながら、部屋に走って行ってしまった。 



「クソっ!」 

千石は閉まったドアを見て、腹立たしげに舌打ちをすると、何かを思ったかのように、

くるりと踝を返して、家を出て、夜の闇に消えていったのだった。 


























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