wishB




















話が決まってからの日々は、二人にとって、驚くほど早く過ぎて行った。





不二は、論文が評価され、米国の大学院へ留学を推薦された。

少し考えた結果、そこが、忍足が開設準備で事務所を構える予定の場所から通学可能

で、知人に紹介してもらった写真関係の師事先も近かったこともあって、

お互いの将来のためと、二足の草鞋を履き、渡米することを決意したのだった。






そして、不二は秋からの新学期にむけての準備を兼ねて、夏休みに入るとすぐ、忍足と共に渡米した。









忍足の父が、候補を上げていてくれたいくつかの部屋を回り、

そのうちの一つの、景色が綺麗な部屋を選び、必要な物を買い揃えたり、

手続きを行ったりして、あわただしく滞在期間を過ごした。



そして、あっと言う間に過ぎていった夏の終わり、忍足は、不二を残して、一旦帰国することになった。











「なんや慌しかったけど、お前とべったりで、ええ感じの時間やったから、これから暫く、

一人になるんがごっつ辛いわ」空港での別れ際に、忍足が苦笑いをしながら不二に言った。

「僕の物は殆ど持って来ちゃってるからね。ま、寛いでもらって構わないよ」

わざと明るく不二が言う。

「アホ・・・素直に『僕も寂しい』くらい言えや・・」

優しく忍足が、不二の額を人差し指でツンとした。

「言わない。だって、これは、僕たちの未来の為のことだろ」

不二は綺麗に微笑んで、忍足を見つめた。

「上手いこと言うな。周助は・・・ま、会社のこともあるから、ちょくちょく、来ることにはなるけどな。

せやけど、俺よりお前の方が先に暮らしてるから、きっと春に俺がここへ越してくる頃には、

お前はこっちで、ブイブイやっとるんやろな」そう言って忍足は、不二の頭をクシャっとした。

「クスッ・・・ご期待に沿うように頑張るよ。君に『なんやひとつも変わってへんやん』とかって

言われないようにね」と不二が笑った。





不二が自分の口真似をして、変なイントネーションで話すのを聞いて、忍足はプッと噴出しそうになった。

「ほんま可愛いなぁ・・・お前は・・・変な奴に捕まったらあかんで。気つけるんやで」

まるで、一人暮らしを始める娘に、心配性の父親が言い聞かせるように、忍足は不二に言った。



「大丈夫。案外、僕は強いから・・・ね」と不二が答えた。

「分かっとるけどな・・・周助、別嬪やからな」

「お褒めに預かり光栄だな。けどさ、それ以上心配したら、オヤジになるよ。」

不二が苦笑いをした。

「日本で、お前の心配ばっかりして、老け込むで。ホンマ」

「次に会うのが、楽しみだな」不二が微笑んだ。
















それから3ヶ月、忍足は、父や兄に従って、学校がない時間を、会社での修行に費やした。

学問として、自分が会得した知識だけでは、社会では通用しないことを、痛感させられる日々だったが、

貪欲に、本業の勉強との両立を頑張り続けた。



そして、一人異国の地で頑張る不二にとっても、とても厳しく辛かったのは確かだったが、

言葉の壁を越え、現地での友人が増え、学業にも少し余裕が出来たりと、苦しい分、

心がとても満たされる感じがしていた。

最初は、学校でいっぱいいっぱいだった日々も、徐々にカメラを持つ時間が増えていった。

身近な街の佇まいや、少し遠出をして収めた景色など、マメに短いながらも文といっしょに

忍足の元へ送っていた。



2泊3日くらいの短い日程で渡米する忍足にとって、そうしたメールや、手紙のやり取りは、

いつも不二を身近に感じることができ、久しぶりの再会でも、二人の間に空間を感じることはなかった。

ただ、ゆっくり話をすることもままならぬまま、お互いの体をぶつけ合って、

貪るように愛を確かめ合う行為に、どうしても走りがちになってしまうことに、お互いが、

心のどこかで苦笑いをしてしまうのだった。



















そしてクリスマス。

学校での友人達とのイベントの関係で、帰国することができなかった不二の元へ、忍足がやってきた。

雪で真っ白に染まった街の、小高い丘の上にある小さな教会で、二人は愛を誓い合った。

忍足が前もって用意して持参していたプラチナのリングが、二人の左手の薬指でキラリと輝きを放っていた。






「あとちょっとの辛抱やな・・・」帰国を前に忍足が不二に言った。

「あぁ。このままいけば、そっちの卒業式には出られそうだよ」

大学に席を残したままの不二は、単位や論文実績がそのまま適応され、

忍足と一緒に卒業できることになっていた。

「こないだ、お前の論文ちょっと読んだわ・・・いっぱしのエコノミストやな。感心したで」

忍足は、にこやかに不二に言った。

「ありがとう。でもまだまだなんだ。奥が深い。頑張るよ」不二が答えた

「写真もちょこちょこ入選しとるやん・・・どっち選ぶにしても、なんや贅沢な悩みみたいやな」

「そうだな・・・まぁ、こっちを卒業するまでに決めようとは思ってるけど・・・

もう少し、この曖昧なままでいたいんだ・・」

「そおやな」

「思うんだけどさ・・・テニスやっててホント、良かったよ」

「ん?」

「そのお陰で、こっちでも、たくさん友達ができた」

「勝った負けたに、こだわらんと楽しむことができるんやったら、

一生やっていけるで、俺はそう思うし、それで続けていくつもりや」

「あぁ、そうだな。今なら凄くその言葉、分かるよ。僕もそう思う。

そうして続けていきたい、君と一緒に」

「あぁ・・テニスだけやのうて、いろんなことを、二人でやっていこう」

「あぁ」









そして春、二人は無事に日本での大学生活を卒業し、忍足は社会人として、不二は学生として

改めてアメリカへ向かう。





「なんかあったら、忍足なんかほっといて、すぐ帰ってくんだぞ!」

菊丸が不二に抱きつきながら言う。

「え・えーじ、苦しい。。。。」羽交い絞めにされながら、不二が苦笑いをして言った。

「恥ずかしいやっちゃなー。こんな人がぎょーさんおるとこで、周助に抱きつくんやめてんかー」

忍足は少しむっとしながら言った。





青学・氷帝共に時を過ごした皆が、二人を見送りに空港へ押し寄せてきていたため、

恥ずかしいくらい騒々しかった。





「テメーらガキかよ。。ったく・・・ダセーな」

跡部は鼻で笑いながら、菊丸を不二から引き剥がした

「俺もたまにそっち行くからな、ま、そんときは、邪魔しにいってやるよ」

跡部が優しく不二に微笑んで言った。

「絶対」そう言って、不二は跡部に手を差し出し、二人は握手をした。





「忍足・・・・テメー分かってんだろーな」

「はいはい。。。絶対、周助を幸せにします」忍足が跡部に答えた

「俺にも誓え!」という菊丸に

「はいはい。。。」





そんなやり取りを、不二は幸せそうに微笑んで見ていた。

「いい面してンじゃねぇか・・・」跡部がそっと不二に言った

「あぁ・・・見れないけど、自分でもそう思う。ありがとう、そうなれるきっかけをくれたのは君だ」

「俺は何もしてねぇよ。気づいて手に入れたのはお前自身だろ?」

「跡部・・」

「んな顔すんなよ、忍足の馬鹿が心配するぜ?」ニヤリと跡部が素敵に微笑んだ



「ん・・・」頷いてから上げた不二はとても綺麗な笑顔をしていた









「元気で」

「幸せにな」

沢山の仲間からの声に送られて、二人は旅立つ






「周助・・」

「侑士・・」

絡めあうように、しっかりと繋いだ手を決して離すことがないように、

手を取り合って、大きな世界へ一歩を踏み出す・・・








温かい声援を背に、光の中へと二人は翔けて行った。














こんな広い世界の中で見つけた、僕の本当の一番・・・

これから、どんなことがあっても、きっと君となら、僕は乗り越えていくことができると信じてる

僕を見つけてくれてありがとう。

僕の全てをかけて・・・君を・・・




強く強く、想い、愛する 



 forever















お前に出会えて、ほんまによかった。

こんな俺を信じて愛してくれて、ほんまにありがとう・・・

これから、どんなことがあっても、周助・・・俺は、絶対お前を離さへん。

俺らの夢は、俺らが自分の手で必ず掴む。

俺の全部を・・・これからの俺らの未来の為に・・・





強く強く、願い叶える 




wish
























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