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自分にとって「本当」に一番の人を見つけたあの日から、季節は流れ・・・


いつしか、僕たちは、世間一般で言われる大人というものになっていた。



















「そろそろ、進路決めんとあかんなぁ・・」

大学生活もあと1年を残したある日、リビングのソファに凭れ、少し遠くをみるような目で、

忍足がポツリと呟いた。



「そうだな・・・」

現実に引き戻されるようで、ここ最近、あえて触れようとしなかった話題に、不二は曖昧な雰囲気で返事をした。


「周助はどないしたいんや?」

「ん・・・テニスも続けたいけど・・・写真もしたい。けど大きな組織の中でもまれるのも

いい勉強になるかなって思ってる・・」

「そおか・・・」と言ったきり、忍足はまた目線を遠くへ飛ばしていた。

「そう言う侑士こそ、どうしたいんだい?」

「俺か・・・俺はお前とおりたい」




「は?」一瞬目を丸く見開いた不二が、次の瞬間プッと噴出して、

「人が真剣に話してるのになんなん??それ!!」と言った。





「真剣やけど?」不二を見つめる忍足の目は・・・真剣だった。




「侑士・・・」忍足の目に、不二は一瞬怯んだ。







「俺の両親と、ゆっくり逢うてくれへんか?」

「え?」

「俺がお前と一緒に暮らしとるのは、おかんも知っとるねん。っちゅーか、

ここの敷金出してくれたん親父やし・・」






高校を卒業してから、都内の同じ大学へ進学を決めてた二人は、それを機に同居を始めていた。





「会ってどうするんだ?」

「その後、お前の両親とこに挨拶に行く」

「へ?」

もう不二の頭はパニクっていて、忍足の発した言葉が訳も分からず、ぐるぐる回り続けていた。

「嫌か?」淡々と、しかし、真剣に忍足が言った。

「嫌とかじゃなくって・・・まだあと1年残ってるんだよ。それに・・・僕は男だ・・・」

不二は忍足に答えた。





「男や女は関係ないで、お前も知ってるやろ?うちのおかん・・・ほんま、たいした女やで・・・

親父もな・・・人間を外側だけでどうこう言う人やない。それに進路しにしてもやな・・・

俺はちゃんと、お前とのこれからのことを見据えた上で決めたいんや」

忍足にまっすぐに見つめられて、不二はだまって頷いた。





忍足の両親とは、何度か顔を合わせたことがあるが、なるほど、忍足の血の元だけあって、

ざっくばらんを通り越して、どこか常人離れをした感じを漂わせていた。

父親は関西の方では名士で、医者でもあった。

長年勤めていた大学病院を辞めて、事業家に転身してから、祖父の跡を継いで、

事業をいくつも手がけている。



最近、アメリカで暮らしていた姉夫婦が、帰国して、義兄がその傘下で働きはじめていた。



もともと東京に来たのも、事業のついでと、もっとテニスを・・と言った忍足の希望で、

暫く居ただけだった。不二との生活を始めるのにあたって、部屋やその他諸々を用意して

自分達は、とっとと地元へ戻っていったのだった。





「問題はやな・・・・」忍足が続ける「お前んとこや・・・」

「え?僕?」

「あぁ・・・俺のとこは、もぉ、姉貴らが跡継ぐんで話も決まっとるからええ。

せやけど、お前不二家の長男やろ・・」

「あぁ」

「その跡取りのお前を嫁にくれと、男の俺が言いに行って、許してもらえるかどうかや」

忍足は腕組をして、じっと一点を見つめながら言った。

「嫁って・・・」不二の頭の中はぐちゃぐちゃになっていた。

「まぁ、俺としては、反対されても気持ちを変える気はないし、

怒鳴られようと、どつかれようと、そんなことは構わへんねんけどな・・・」

「ちょっ・・・ちょっと待てよ」少し自分を取り戻してきた不二が言った。

「なんや?」

「なんでいきなり、そこまで話が飛躍するんだ?」

「え?なんかおかしいか?」

「だってさ・・・」

「ちょっと待ってーな・・もしかして、お前、他に心に決めた奴がおるとか言うなよ!!」

何故か怒り口調の忍足。

「はぁ?」忍足の剣幕に、不二は素っ頓狂な声を上げてしまった。

「跡部とか言うたら・・俺は許さんで!!」

「ちょっと待てよ!いつ僕がそんなこと言った!」今度は、不二の勢いに忍足がたじろいだ。

「ちゃうんか?」少し冷静になろうと、忍足が不二に尋ねた

「そんなはずある訳ないだろ?っちゅーかさ、君は僕のこと、信じてへんかったわけ?」

長く忍足と生活を続けているためか、興奮してくると不二の言葉は、関西弁が多少混ざって、

変な言語を成してくるのだった。

「信じとるよ・・・」

「ほんなら、どうしてそういうこと言うんだよ!!」

「お前が嫌そうに言うからやろ!」

「順番がおかしくないかって、僕は言いたかったんだよ!」

「あっ・・・」そう言って忍足は黙り込んだ





そして暫くしてから、そっと不二を抱きしめて、自分のほうへ顔を向かせてから


「好きや・・・周助。これまでそうやったように、これからも、俺はお前だけを愛し続ける。

絶対に後悔はさせへんから・・・俺と一緒になってくれへんか?」




今まで見せたことのないくらいの神妙な顔で、不二に告げた。




「侑士・・・」突然の真剣で、改まったような告白に、不二は戸惑ったように呟いた。

「ええか、あかんかだけ・・・・それだけ言うてくれへんか?」少し泣きそうになっている忍足に

「もちろん・・・ええ・・・よ」と不二が綺麗に微笑んで答えた

「こんな男の僕でよかったら・・」と付け足す不二に




「関係ないっちゅーとーやろ!!俺は周助やないとあかんねん!!お前が好きやねん!

お前でないと嫌やねん!!」と忍足が言った

「僕も・・・僕も君じゃなきゃ嫌だし・・・君しかいない・・・」不二も、真剣に答えた。





「俺は、別に神さんや仏さんなんか信じへんけどな・・・お前と出会えて、一緒にこうしておれることに

世の中全てのモンに、ほんまに感謝しとるんや・・・」

腕の中に不二を抱きしめて、その髪に顔を埋めながら忍足は言った。

腕の中の愛しい不二が、たまらなく愛しくて、抱く手に自然と力が入った。

不二は、忍足の温もりに幸せを感じながら、今まで一緒に彼と過ごしてきた時間を思い出していた。






いろいろなことがあって、やっと自分の本当の一番の存在と気づいた時のこと、

初めてのキス・・初めてのぬくもり・・

二人で過ごした甘い時間のこと、喧嘩したときのこと、

沢山の仲間に囲まれて、応援されて過ごしてきた日々の全て・・・

そして、どんなに喧嘩しても何があっても、一日の最後には

かならず優しく微笑んで、自分を腕に抱いて、見つめてくれる

目の前の人との全ての瞬間を・・・・







その全てが、かけがえの無いものだと、思えたのだった。


















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