suddenly・・・

















出会い頭の事故・・・?



始まりは、そんな感じだった・・・















「超絶、感じ悪かったよね」

風呂上りに、冷たい水を口にしながら、不二は思い出したかのように、ポツリと言った。



「え?何がや?」

一足遅れて、部屋に入った忍足が、ベッドの淵、不二の隣に腰掛けながら尋ねた。



「一年前の今日・・・」

不二がポツっと言ってから、不敵な笑みを浮かべて忍足を見やった。










一年前・・・・










「あれぇ・・・青学の不二やん・・」

お互い、隣に女性を連れて歩いていたところ・・・街中で偶然出会った・・・

「ん?」感心なさげに、不二は声のする方をちらりと見て言った。

「俺や・・・」と言う忍足に

「あぁ・・・跡部んとこの、お笑い担当係」と、不二はしらっと返した。

「なんでやねん!」

相変わらず感心なさげな不二に、名前も言ってもらえず、しかも、跡部の名前を出された上に

お笑い担当と言われ、忍足は思わず声を荒げた。

「あれ?違うんだ・・・」クスッと笑い、隣の女性をエスコートするように去ろうとした不二を

「ちょっと待ちぃな」と、忍足は、不二の腕を掴んで引き止めた。

「何?まだ何か用があるの?」急いでるんだけど僕ら・・・睨みつける視線で不二が言う。



何故か、その瞳に引き込まれるような気がして、言おうとした文句を忘れてしまった忍足は、

意志とは違う言葉を口にしてしまう・・・




「それ誰や?お前の女か?」

そして、忍足は少し上からじっと不二を見つめた。

はぁっと、大きな溜息をついてから、至極不機嫌そうな目を忍足に向けて

「それってさ・・ほとんど面識ない人間に聞くことかな・・・不躾だね」と、不二は冷たく答えた。




忍足の連れている女性は、不二を掴んでいる反対の忍足の腕にぴったりと自分の体を押し付けて、

絡みつくようにしながら「ねぇ・・・もういいでしょ?」と甘ったるい声を上げ、

二人のやりとりに割って入る。



一方、不二の連れの女性は、落ち付いた微笑を浮かべながら、一歩後ろで静かに見守っていた。



大人の余裕か。どう見ても、自分の連れの方が・・・自分達の方が劣ると・・・

その時、忍足は、強く思った。

『気ィわるぅ・・・なんやムカつくな・・・』

これでも自分はモテる・・・たくさんいる取巻きの中から、それでもいい所を選んできたつもりだった。

しかし、目の前の二人はどうだ?

ケバさもなく、清楚でしかも容姿端麗で、いかにも良家の子女といった感じの美人と、

それにも勝る美人(?)の不二のツーショットに、嫌というくらいの格の違いを見せ付けられた気がした。 




今まで、不二と会話というものを交わしたのは、跡部といるときの、ほんの2〜3回の簡単な挨拶くらいだった。

試合会場では、ライバル校の一人として見かけるだけ。

不二の普段着姿を見るのは、忍足はこれが初めてで、ぶっちゃけ超絶美人の二人組・・・

そう思って、視線を向けた矢先のことだった。

どっちも美人だが、目がいくのは・・・ひきつけられるのは・・・・不二の方にだった。




「話がないみたいだから行くね。じゃあ」と不二が言った時

「なぁ!ちょぉ・・・自分ら、俺らとかえっこせぇへん?」と忍足が声を上げた。

「はぁ?」呆れる不二の声が響く

「冗談じゃない・・・」と不二が言いかけたとき、忍足は自分の腕に絡みつく女を振りほどくと、

不二の腕を掴んだまま「堪忍な!!」と、不二の連れに声をかけて、逃げるようにその場を去ったのだった。






「折角のデート、邪魔されてさ・・・・」と恨めしそうに呟く不二に

「嫌なこと、思い出させるなぁ・・・・」トホホと、忍足は苦笑いをした。





あの、後すっかりオカンムリの不二を、容赦なく連れまわした上に、

しっかりちゃっかりデートコースを辿った忍足は、

帰宅した不二から、夜中遅くまで八つ当たりのターゲットにされた跡部に、

翌日、こっぴどく、仕打ちをさられたのだった



「朝練からネチコチ嫌味言われて、コート入ったらわやくそされるし、授業中は、後ろからペンで刺されて

椅子蹴られるし、学食行ったら、お気にのおかず取られるし、帰りは、樺地の代わりに、カバン持ちさせられるし、

ほんま・・・エライ目おおたわ・・・」

忍足は、当時を思い出してしみじみ言った。

「自業自得だ。だいたい、あの時一緒だった女の子が可哀想。その子を彼女がずっと慰めてたんだからね、

ほんと、迷惑極まりないよ」と不二は言った。

「別に、付き合うとったんちゃうから、ええねん・・・何処の誰やったかも、思い出せへんし・・・

けど、あのお姉さんにはすまんかったな・・・」と忍足は言った。

「ほんとね・・・デートを君に邪魔された上に、見ず知らずの女の子を慰め続けるはめになってさ。

年上の、物分りのいい人だったから良かったものの、そうじゃなかったら末代まで祟られるよ」





「きっつぅ・・・」情けない顔をする忍足を、不二はふふっと笑って見るのだった。






「せやけど、よぉ堪忍してくれたな・・・」他人事のように、感心しつつ言う忍足に

「姉さんの関係で、知り合った人だったからね」と不二は答えた。

「後悔しとる?」ふっと尋ねる忍足に

「え?何を?」と不二は尋ねた。

「その人のことに決まっとるやん・・・」どこか寂しそうな忍足に

「そんな顔するくらいなら、聞かなきゃいいのにさ・・・・」と不二は呟いてから、そっと忍足の額に指を当てた。



「お馬鹿さん・・・」

「え?」と、少し驚いたような顔をする忍足に

「そう言う侑士は?」と不二が呟いた。

「俺?」

「うん・・・後悔してるの?僕に、声なんかけて、こんなことになっちゃって・・・」

「後悔なんかするはずないやろ」と忍足は、きっぱりと言い放った。

「そっか。僕もだよ・・・きっかけはちょっと訳ありだったけど、君と出会えて

こうして、一緒に過ごすことができてることに、感謝さえしてる」

「そうやなぁ・・・なんや、出会い頭の事故みたいなんかなぁ・・・思わずお前に惚れてしもた」

と忍足は、ふっと微笑んで言った。

「くすっ・・・」と、子リスのように笑う不二を抱きしめながら、ベッドに倒れこんで忍足は、

「惚れたんは思わずやったけど・・・愛情は、日増しにてんこ盛りやで?」と言って、そっとキスをした。

「んっ・・・」そっと瞳を閉じた不二は、忍足の首に手を回し、覆いかぶさる温もりをゆっくりと受け入れる。

チュッと短い音を繰り返しながら、戯れるようなキスを繰り返し、ベッドの上を転がって、

二人は、楽しげにじゃれ合うのだった。



「あれから一年か・・・」しみじみと言う忍足に

「これからもよろしくね」と、不二がぎゅっとしがみつくようにしながら言った。

「あぁ・・・これからのほうが、うんと長いんやからな・・・ずっとやで?」

「うん・・・」

そして、再び重ね合わされた唇に、言葉は必要なかった。



シーツの波に埋もれるように、二人は自分の全てを曝け出して、お互いの温もりを貪りながら、

出逢えた奇跡と、共に歩んできた軌跡と、これからの未来を思うのだった。











きっかけなんて、とても些細なこと

けれど、僕らは出会って

こうして時を重ねていく

それは、これからもずっとずっと

それが当たり前のように感じるくらい

一緒に居よう・・・



















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