俺たちの紆余曲折

























ガキのときからずっと・・・



あいつの背を見て



追いつこうと



追い越そうと



あいつの一番近くで



あいつを追いかけてきた


あいつの弟







あいつに守られ



慈しまれてきた



あいつにとって



かけがえのない最愛の弟



裕太が










あいつを追って進んだ青学を辞めて

聖ルドルフに転校し

あまつさえ

家までも出て

寮生活を始めたと聞いた時







俺は

あいつが今頃どうしているのかってことが

気になって・・・



ガキのときからずっと見てきたあいつの心ン中が

分かりすぎるくらい

分かってるつもりだったから

気になると同時に

何故か俺自身の心も痛かった








今の俺は

あいつの傍にいねぇし

何もしてやれねぇ

言ってもやれねぇ




多分、それは

あいつが望んじゃいねぇと思っていたから・・・・























「いじめか?」



「兄弟喧嘩じゃねぇの?」



「いくら天才の弟でも元祖天才兄貴は越えられねぇってことか?」







知らせと一緒になって

くだらねぇ噂が飛び交っていた









いじめ?




そんなはずねぇ。あいつがそんなこと許すなずねぇだろ・・・

ガキんときからあいつがどれだけ裕太を大事に守ってきたか

俺は知ってる







兄弟喧嘩?



ありえねぇ。いくら裕太が食ってかかっていったって

あいつはすべてを許すんだ

包み込むようなやんわりした笑顔で・・・

俺は何度も見てきた










じゃぁ・・・

やっぱりプレッシャーか



天才と名高い兄貴の傍で

見せ付けられた天賦の差に

限界を見たのか?







それなら






あり得る






いや





まさにそれだ















裕太は人一倍

負けん気が強い



そして

人一倍あいつを尊敬している












きっと、袂を別つというより

武者修行にでも出る

そんな感じだったんじゃなかったのか?



いつも自分を覆うように

守るものを

殻を破って

一人で

自分だけの力で

成長しようとしただけなんじゃねぇのか・・・











けど

あいつは

どう思ってるのか





裕太はきっと

テメーの腹を晒すようなことはしてねぇだろう







だとすると・・・






あぁ・・・








きっと








間違いねぇ・・・









そうだ






今頃、あいつは・・・












自分を責めてるだろう













丁度、昼休みだったか・・・

引越しが終わったと

当の裕太から連絡が入った



突っ張って

背伸びしやがって

俺に説明しやがったけど



結局は俺が思ってた通りだった。



そして最後に

あいつを頼むと



そう言いやがった。









けど



あいつは俺を必要としてないんじゃねぇのか・・・

俺は心臓をぎゅっと掴まれたような

そんな気になった・・・



















進学先を俺とは違う学校に決めて

俺の傍にいることを辞めたあいつ



すぐにあいつを追っかけて転校していった

俺の従姉と付き合ったり

そのあとはもう・・・女だの男だの

あいつの浮名はいやってくらい聞かされた



一切の連絡もなく

俺たちの接点は



無くなっていた



俺は俺で

好き勝手にやってるしな・・・・













そんなことを考えながらいつものように部活へ向かおうとしていた時だった



お袋から連絡があって

あいつが俺の家で待ってるからと

車を寄こしたと・・・







すっ飛び帰った俺が久しぶりにみたあいつは

傷つき

自分を責めて

酷く脆く弱弱しい姿をしていた。









「跡部・・・」





「とりあえず、部屋へ行く・・・・着いて来い」





「ん・・・」











部屋に着いたあいつは

ここ数日抱え込んでいただろう葛藤を

やっとはけ口を見つけたかのように

俺に話した





そして案の定

自責の念で自分自身を縛り付けて囲い込んでいた



























「全部僕のせいだ・・・

 僕が裕太を追い詰めた」



最後にポツリと言った不二に







「だれのせいでもねぇ」と跡部は静かに言った。



はっとして跡部を見た不二に



「別に裕太はお前に追い詰められちゃいねぇ。お前が追い詰めたのは

 お前自身だ」と続けて言った。





「!・・・けどっ・・」言いかけた不二に跡部は揺るぎない視線を向けて



「けどもへちまもねぇっ!お前が一番分かってるはずだろっ!」と少し強い口調で告げた。



え?と言った顔をしている不二に

「なんで俺の傍から離れたんだ・・・」と跡部は苦しそうに呟いた。





「それとこれとは・・・」





「同じことだ」





「えっ・・・」





「お前が俺から離れたのは、お前がお前だけの力でどこまで通用するか試したかったんだろう?

 俺がいなくても、お前でいられるか知りたかったんだろうが・・・それと同じだ。

 お前という庇護の傘の下でなく、裕太は裕太として試してみたかったんじゃねぇのか

 己の力と可能性をよ・・・」



跡部の言葉に不二は黙って当時の自分の気持ちを重ねるように聞いていた・・・・







「ごめん・・・」

ふっと腑に落ちたような不二の顔に跡部は内心ほっとした。





「お前もさ・・・兄貴面するんなら最後まで見守ってやれ」





「ん・・・跡部が僕にしてくれたように・・・だね」





「あぁ」





「いつか戻ってきてくれるかな・・・」





「ガキじゃねぇんだからな」





「ん・・・そうだな」





そしてふんわり笑った不二の顔は跡部の記憶の中の不二そのものだった。







口にはしなかったけれど

困った時に

頭に真っ先に浮かぶのは跡部の顔で



がんばれてきたのも

跡部の存在があったから



そして

本当に自分を幼子のころから知っている跡部だからこそ

自分の弱さも脆さもすべてを曝け出して

飛び込んでいくことができたのだと







不二は心底そう思っていた。









深く傷ついた穴を埋めることができるのは跡部だけ

さまよう自分の心を光の先に導くことができるのは跡部だけ



ほんとうに差し出して欲しい手は

掴みたい手は

跡部だけ・・・







もがき

苦しみ

そしてたどり着いた結論。



裕太の件で

やっと正面向かってそれを見つめ直し

受け入れることができたと







そしてここまで自分が辿りつくまで

黙って見守っていてくれた跡部のように



自分も裕太を見守ろうと

そう思えたのだった。













『ありがとう・・・跡部』





















それ以降あいつはいつの間にやら俺の部屋に俺より先に帰ってきてたり

夕飯時に俺んちにやってきたりするようになった。



またガキの時みたいに・・・・













俺が自分の身辺を清算していったのは言うまでもないがな・・・

自分でも驚くくらい速やかに・・・・

忍足のヤローの嫌味も

今の俺には全く通用しねぇ











戻ってきたから

なにより大切だった

あいつが



あいつ自身の判断で

あいつから









俺たちはまた

これから始まる











俺はもう振り向かねぇぜ

















過去も未来も

お前のすべてを受け止めてやる









さぁ











来い・・・・・





























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