空を見て君と想う
たとえば夜空を見上げて
降り注ぐように輝く星々を見た時
この星に、人として生を受けたことは、
想像もつかないくらいの偶然なんだろうって・・・
たとえば街の雑踏の中
ただすれ違うだけの、たくさんの人ゴミにもまれた時
その中の、たった一人の存在に出会う確立は、
考えられないくらい低いんだろうなって・・・
そして、凄い偶然と稀な出会いの中で、
なおもお互いが相手を必要と思うことは、
もっともっと、在り得ないようなことなんだろうって・・・・
無数に散らばる星々の寿命に比べたら、
ほんの瞬間でしかない僕ら人間の人生において、
人との出会いなんて、まさしく奇跡に近いんだろうと思う。
そんな中で・・・
僕らは出逢った。
僕は君が、無くてはならない存在と感じ、
君も僕を、そう感じてくれている。
きっと、そうなる可能性を数字にしたら、
それこそ、天文学的なものになるだろうな・・・
『どうしてんだろ・・・』
コンビニで、今日発売のコミック誌とお気に入りのジャンクフードを買って、
ぶらぶらと家までの道のりを歩きながら、綺麗に光る月と、その傍で負けないくらいの輝きをしている、
宵の明星を見て、ふっと・・僕は跡部のことを思い出した。
『今頃だと・・・みんなでわいわい夕食ってとこかな・・・』
跡部は、氷帝テニス部のレギュラー達と、1週間の予定で北海道にスキーへ出かけていた。
知った仲だからと、不二も誘われたのだったが、やはり、一人他校の自分が加わるのは、
気が引けたのと、春から高校を、氷帝に進学することを決めていたので、少しでも青学の皆と
一緒に過ごす時間を持ちたかったのもあって、断っていたのだった。
その間、跡部とは短いメールの交換だけ。
『女の子じゃあるまいし・・・』自嘲しながら、僕は少しだけ、跡部が恋しくなって、
胸がキュンとなるのを感じた。
家に帰ってから、気分を紛らわすために買ってきたコミックを、隅から隅まで読んで、
お菓子をつまみながら、ぼんやり夜空を見上げてる・・・
『あぁ・・・また・・・』
意外な自分を見つけた気もするけど、少し情けないような気がして、
とっとと眠って、忘れることにした。
そして、ベッドに寝転がった途端、メールの着信を知らせる音が鳴った。
それは、跡部専用に設定してる音じゃなく、忍足がオリジナルで、作って勝手に登録してた
忍足専用の音。
あの時忍足から聞いた説明には、この曲には、ちゃんと歌詞があるらしい。
『パ●ナス、パ●ナス、モスクワの味・・・』だったか・・・
大阪では有名らしいけど、僕には全く意味不明。不可解な旋律だ。
『今、跡部の奴、一人で部屋におる』
短い内容だった。
これって・・・僕にコールしろってことなのか?
おかげで、折角寝かけていた自分の中の、柄にもない感情に火がついて、
僕は、気づくと跡部の番号を発信していた。
『あー、俺』(相変わらず俺様・・・ま、誰に対してもこうだってのが、ある意味すごいと思うけどな)
「僕・・・」
『着信見りゃ、分かるっつーの』(あぁー、そうですか、ムカつくなぁ・・・)
「・・・」
『拗ねんなよ』(誰のせいだ)
「拗ねてない」
『あ、そ。で?』(掛けた僕がバカだった!)
「別に・・・」
『んだよ・・・用もねぇのに、かけてきたのかよ』(ムカっ!)
「邪魔して悪かったね」
『別に、誰がいつ、邪魔だっつったよ』(お前だろ!お前!)
「言わずもがな・・・だろ」
『ふんっ・・・つーかさ、お前、電話でも丸分かりだな』
「何がだ?」
『拗ねてんの、イジケてんの、構って欲しいの、全部だ』
「はぁ?」
『負けたみたいだとかっつって、意地張ってんじゃねーの』(あーもぉ・・・)
「跡部のバカ」
『言ってろ』(死ぬほど悔しい・・・けど)
「僕を放っておくな」
『!』(何で黙ってんだよ)
「バカ」
『不二・・・』
「何・・・だよ」
『晴れてっか?そっち』
「え?・・・あぁ」
『じゃぁ、月・・・見てみろ』
「ん?・・・もう、見てた」
『そうか・・・綺麗だよな』
「うん・・・跡部・・・」
『愛してるぜ』(耳に響く・・・すごくいい声・・・ずるい・・・僕が言おうとしたのにさ)
「ずるい・・・僕が言いたかったのに」
『こういうことは、俺に先に言わせろ』(結局・・・君には敵わない・・・)
「跡部・・・」
「部屋に戻ってきて、月眺めてたら、お前のこと思い出してたところだった」
跡部のこの言葉が、嬉しくて、悔しくて、僕はつい泣いてしまった。
僕の泣き声に、受話器の向こうの跡部は、少し焦ったみたいだったけど、
いろいろ、この四日間の間に溜まってたことを、二人で話をして、
最後は笑って『おやすみ』が言えた。
離れたところにいても、同じものを見て、同じ思いでいられた事を、
僕は凄く嬉しく思った。
人から見れば、とてもつまらないことかも知れないけれど、
僕たちには、こんな些細な事の一つ一つが、大切な思い出となっていくんだ
この日以降、必ず、夜になると、跡部が電話を掛けてきれくれた。
後で忍足が教えてくれたけど、跡部もなんだか、寂しかったのか、俺様度が低かったらしい。
そして、あの電話から凄く機嫌が良くなったって・・・・
『空も繋がってるけど、何より心が繋がってっから、いつも俺達は一緒だ』
跡部が僕にポツリと言ってくれた言葉・・・
うん、そうだな・・・ありがとう。跡部。
それ以来、僕はどんな時も、いつも跡部を傍に感じることができるようになった。
あの時、跡部が先に僕に言ってくれた『愛してるぜ』って言葉が、悔しいくらい、僕を強くしてくれてる。
僕は君に出会えたことを奇跡と思い。
君は僕と出会ったことを必然と言う。
この出会いに感謝して、
これからもずっと一緒に
二人で同じ時を重ねて。。。。
「愛してるぜ・・・不二」
「大好きだよ・・跡部」
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