男の浪漫?



















学園中の女子生徒が、ある日突然、髪を真っ黒に染めて来た・・・



「なっ・・・なんや・・・」

昨日までは、どちらかと言えば、栗色や明るいカラーが多かった校内。

忍足は、校門までの道のりを、いつもより重く感じると思っていた原因が、

校門を入ったところで、目の前に展開する黒髪だと分かると、

思わず、困ったように呟いたのだった。

つややかな黒髪も好きだが、柔らかな薄茶の髪も好きで、

それが極端に、どちらかに偏ってしまっていることに、

心の中で苦笑いをしてしまう。




「・・・ったく・・・今度は、何を言いやがったんだ?」

背後から、車が去る気配と共に、不機嫌そうな跡部の声が、聞こえた。

「別に」そして続いて聞こえてきたのは、楽しげな不二の声。

ふっと振り返ると、黒い髪の合間を、二人の茶髪が、ゆっくりと歩みを進めてくる。

「おはようさん」忍足は、二人に向かって声を掛けた。

「おぅ」短く答える跡部に続いて
「おはよう」その傍らの不二が、綺麗な笑顔で、柔らかく忍足に挨拶を返した。

跡部のオーラは、周囲に緊張を走らせ、不二のオーラは、その緊張を見事に蕩けさせていく。





「なんや、朝からびっくりしたわ・・・っちゅーか、ここは日本やってんなぁって

思てしもたで」忍足は、女子達の黒髪を笑いながら跡部に話した。

「ふんっ・・・どいつもこいつも・・・いい年こいで、自分ってモンがねぇから、

どっかのバカの一言に、踊らされるんだ」跡部は、吐き捨てるように言った。

「クスッ・・・指パッチンとかにもね」笑う不二に

「俺のことじゃねぇだろ。アーン?」と跡部は、不二の額にデコピンをした。





三人のイケメンが並んでいるだけでも絶景なのに、それが、丁度いい具合に絡んでいる。

黒髪の少女達からは、ため息が漏れ零れていた。






「で?」何を言った?と、さっきの続きとばかりに言う跡部に

「ん・・・特に、何って言ったつもりはないよ。思い当たる節といえば、

自分には無いから、綺麗な黒髪見ると、触れたくなるって話したことくらいだ」


「「はぁ・・・っ」」

忍足と跡部は、ほぼ同時にため息をついた。


「それだ」
「それや」


「え?でもさ、それって、昨日のことだよ」


「半日あったら十分や・・・」忍足は苦笑いをして言った。

「へぇ・・・すごいなぁ」と、まるで他人事のように言う不二を見て、

跡部は再び、ため息をついた。



「そない言うたら、こないだは、紺のハイソックスちゃうかった?」

「そうだっけ?記憶にあるのは、革靴には、やっぱりハイソックスだよ・・・ってことくらいだけど?」

忍足に答える不二に跡部は

「その前は、香水騒動だ」とムッとしたように言った。

「あぁ、せやせや。お前、途中で気分悪なったっちゅーて、保健室で唸っとったなぁ」

当時の、跡部の様子を思い出して笑う忍足に、

「冗談じゃねぇ、っつーの」顔面蒼白だった自分を思い出して、跡部はうんざりだと言った。

「別に僕のせいじゃないだろ。僕は単に、バラの香りが好きだって、言っただけじゃないか」

拗ねたように言う不二に

「せやけど、その次の日から、女子が全員バラの匂いさせてきてたやん。学校が

花屋でも始めたんかと思たくらいや」

「忍足まで、大げさだな・・・第一僕が好きだって言ったのは、跡部の庭にあるバラのことだよ」

「そんなん、パンピーに分かるかいな」

「けど、跡部が何言っても、そんなことにならないだろ」

「お前ら、人気あるんは、どっちもどっちやけど・・・跡部は、なんやきっついとこあるから

遠巻きになるんやろうけど、不二の場合は、もしかしたら・・・て淡い期待してしまう

とこがあるんかも知れんなぁ・・・せやからちゃうのん?」

「案外、跡部の方が優しかったりするのにね。みんな、どこ見てるんだろうな」

不二の言葉に、一瞬忍足は言葉を詰まらせた。

そうとも言える・・・のだ。ある意味、不二の方が、容赦なかったりするのだ。






「っつーかよ・・・」



二人の会話をさえぎるように、跡部がポツリと呟いた。




「ん?」と言う不二に




「お前、分かってやってんだろ」と跡部が言う

「まさか」笑う不二を見て、忍足に、何故か悪寒が走った。

「ったく・・・」呆れたような跡部に

「女の子は、可愛いよね」と不二が言った。

「嘘くせぇ・・・」跡部は呟く。





「学校中が、十二単ってのも、なかなかいいかもね」呟く不二

「「はぁ?」」忍足と跡部の声が揃う。

「平安絵巻だよ。クスクス・・・ある意味、男の浪漫じゃない?」一人楽しそうな不二に

「お前・・・それ、俺ら以外の誰かに言ったら、殺すぞ」跡部が唸った。

「クスクス・・・おっかないねぇ」








一番、おっかないのはお前や・・・

渋い顔をする跡部に、楽しげに笑いかける不二を見て

忍足は心の中で呟いた。




この騒動・・・

暫く収まりそうにもない・・・・



























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