結論は、俺様が出す。
部活を終えて、
跡部の部屋に戻ってきて、
シャワーで汗を流して、
冷えたドリンクを飲みながら、まったりとした時間を過ごす。
最近、こんな感じで過ごすのが、当たり前になっていた。
そんな今日。不意に不二が、跡部の方を向いて言った。
「あのさ・・・跡部。僕達、別れたほうがいいかもな」
「はぁーーー??」
「やっぱりさ、いつまでもこのままじゃいられないだろ?」
「正気か?お前・・・マジで言ってるのかよ!」跡部は、呆れ怒りながら言った。
「何があった?」
突発性で、想像もつかないことを口にしたり、行動する不二・・・
随分と免疫ができて、慣れたつもりでいた。
起承転結・・・
物事には流れがある。
が、不二にそれは、当てはまらない。
きっと、「起→承→転」までが、不二の中だけで進められて、
最後に至った「結」について、今、まさに、不二の中から
言葉という形になって、出てきたのだろう。
そこに至るまでの過程を、跡部は「何があったのか」と尋ねたつもりだった。
「違う」不二は、俯いたままボソリと答えた。
何もなかったと・・・
そんなはずは無いと・・・跡部は思った。そして、口にしたくは無かった言葉を口にする。
「・・・他に好きな奴でもできたのか?」
「そう」
一瞬、ピクリと眉を吊り上げ、面食らったような顔をした跡部だったが、
不二の様子から、その答えが真実でないことくらい見抜ける。
「・・・で?誰だ?それくらい言え」
跡部は、大きくため息をつき、平静を保つように自分自身にいい書かせながら、
不二に対して、酷く冷静に言った。
「・・・・」見透かされ、俯いたまま何も言えない不二に
「やっぱ・・・嘘だな」と、跡部は、念を押すように言った。
「嘘じゃない」
「嘘だろーがよ」
「ほんとだよ」
「まぁいい。訳を言え!訳を!!なんでそう思ったのか訳を言えよ!」
頑なままの不二に、跡部は、痺れをきらせたように、理由を聞こうと問いかけた。
「僕は女の子じゃない」
「んなこたぁー、最初ッから、分かってんだろーが」
「女の子にもなれない」
「誰もなれなんて思ってねーよ!!」
「跡部なら、どんな女の子だって、選びたい放題だろ・・・」
「くだらねぇ・・・つーか、お前もだろ!それ」
「でも、女の子には敵わない」
「俺の中じゃ思いっきり勝ってんだ、それでいいじゃねぇか!」
「跡部はは跡取りだし」
「だから、それはお前もだろ」
「いいとこの子だし」
「それも、お前もだ」
「一人っ子だし」
「一人子のどこがいけねーんだよ!」
埒の明かないすったもんだの後の、一瞬の沈黙の後・・・
「僕は、跡部の赤ちゃんを・・・産んであげれない」いつになく、か弱い声で、不二が呟いた。
「はぁ?・・・」っと脱力して、跡部が言葉をかけた。
「おい、不二・・・ンなこたぁ、俺も親父もお袋も、全部承知してんだよ・・・」そう言ってから
「あ!『そんな綺麗事では済まされない』とかほざくんじゃねーぞ!
ったく・・・そなことも分かってねーのか?」
「それは・・・分かってる」この件に関しては、跡部の母にも、前に言われていた事だったので、
不二には承知のことだった。
「なら、どーしてだ?」
「どーしてもさ・・・皆がどう言ってくれても・・・僕が、跡部景吾っていう、
君の遺伝子や血や軌跡を残せないことは、どうしようもない事実だろ・・・」
「おい」そう言って、跡部は不二を抱き上げ、
ベッドに腰をかけると、自分の足の上に、向かい合わせになるように不二を座らせ、
俯いた顔を覗き込み、諭すように優しく話しかけた。
「よく聞け。俺は、お前がいりゃあそれでいい。俺は、そんなことに価値観をおいちゃいねぇ。
第一な、そんなこと言ってたら、俺だって同じじゃねーか」
「僕なんか・・・」
「アーン?バカかお前。俺にとって、お前は、俺の命を賭けるだけの価値があるんだ。
もっと自分を評価しろ。至上稀に見る天才だろ?それが、お前で終わっちまうんだぜ。
お前の軌跡を残してやれねぇ・・・俺だってお前と、一緒なんだよ」
「君に比べたら・・・」
「素直じゃねーな。俺は、この世に何も残したいなんて思っちゃいねーよ。
忘れ去れていくもんでいいんじゃねーか。俺とお前の人生を、俺達自身が十分楽しんだなら
それで十分だろ?」
「跡部・・・」
「なぁ、不二よ。人はな、死んだ後でも、自分が一番会いたいと思う人には、
あの世でまた、会えるらしいぜ。どっちかが先に死んでも、残ったほうが覚えてる。
どっちも死んじまっても、それでいくなら、また会える。
俺は、それで十分だ。それ以外、俺にしてみりゃ、どれもこれもくだらねぇことだ。
ったく・・・お前は、またそんなくだらねーことを、独りで考えて、
独りで結論出しちまったってか?・・・ンと、しょーがねーヤツだな」
そう言って、不二をそっと優しく抱きしめて頭に顔をうずめた。
「お前が心配しねーでも、跡部の家の連中は、そんなせこい価値観してねーよ」
そして、両手を不二の頬に優しく当てて、自分の方へ向かすと
「お前の悪い癖だ。独りで考えて突っ走る。すぐ前にいる俺様に、
手の内何にも見せねぇで、いきなりひねり出した結論は、排他的で自虐的で突拍子もねぇ。
しかも、いつもいきなり突然だ。そうなる前に、何か考えが過ったら、その場で、俺にすぐ言え。
俺が結論を出してやる。分かったか?」
「ん・・・」
「ったく・・・お前のせいで、寿命が縮まるじゃねーか」
「ごめん・・・」
「悪いと思うなら、これからは、俺の言うとおりにしろ」
「ん・・・」
「お前が、、俺のことを想って、そうなるのは解ってるけどな、
お前が、俺のことを想うのと同じように、俺も、お前のことを思ってることを忘れるな」
「跡部・・・」
「独りで考えるな。お前は俺の傍で、いつもの不二周助らしくやってりゃいい。わーったか?」
「ん・・・ありがとう。跡部」
「じゃあ、この件に関しては解決だ。な?」
「ん」
「金輪際、蒸し返すなよ」
「はい」
跡部の胸に顔を埋めて、大きすぎるくらいの、愛情と優しさを、不二はしみじみと感じた。
「あー、もぉ・・・腹減った」
「ん・・・」
「ったく。お前の爆弾発言のせいで、余計な時間、くっちまった・・」
「ごめん」
「ま、いいけどよ」優しく微笑んで、頭を撫でる跡部に、
さっきまで、重くのしかかっていた漠然とした不安がすっかり消えて、
いつもの笑顔を見せて「好き・・・」と不二が言った。
「あぁ・・・それでいいんだ」跡部は、ほっと、安心したように言った。
これから、何かあっても、
きっと、大丈夫・・・
不二はそう想ったのだった・・・
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