未来-5-
























とろけそうな時間を過ごし、まだ朦朧としている意識の中で

お互いに短く荒い呼吸を繰り返しながらきつく抱きしめ合った。




跡部は不二の目じりの涙の跡にキスをしてその華奢な体を抱きしめた。



「跡部・・・」跡部の胸元で不二が呟くように言った。



「ん?」



「僕はこれからもずっと君の傍にいてもいいのかな?」



「あぁ・・・何度も言わせるな。お前はこれまで通り、これから先ずっと

俺の傍で、俺と一緒に歩き続けるんだ。もぉあん時みてぇに、俺と違う道を歩くなんて

言いっこなしだぜ」



「・・・ん・・・愛してる・・・跡部」



「あぁ・・俺もだ」



再び跡部の唇が不二の首元へ降りていく



「不二・・・」



「抱いて・・・強く・・・放さないで・・・」



「あぁ・・」



「僕を・・・君で溢れさせてくれ・・・」



「あぁ・・気の済むまでくれてやる・・・好きなだけ、俺様に溺れるがいい・・・」



お互いの心に、なんとなくだが、わだかまってものが取れたせいか、

そのまま溶けてなくなりそうなくらい、夜明け近くまで二人は何度も求め合った。











翌日



「じゃぁな。無理すんなよ」



「あぁ・・・ありがとう」




黒塗りの高級外車で校門まで送ってもらい

不二はけだるい体を動かして車から降りた。



と、突然背後から菊丸タックルを受け、よろけてこけそうになった。



「おっは〜〜・・・・って不二!だいじょうぶ??」

あまりの不二の頼りなさに菊丸の方が驚いた。



「おいっ!猫野郎!何やってんだ!殺されてぇのか」

車の中から跡部が叫んだ。



「だ、大丈夫・・・ちょっとびっくりしただけだから」



「猫って失礼だな!ったく・・・元凶は跡部だろ?もぉ。不二に無理させないでよ!」

察して菊丸が跡部に釘を刺した。



「テメーに言われなくったってわーってる。ったく。。。じゃぁな」

ふんっと跡部は去って行った。



「昨日は跡部んちお泊りだったんだ?」



「ん。少し・・・話すことがあってさ・・・」



「そっか。けど前向きな話だったんでしょ?」



「あぁ」



「その様子見てると分かるよ」



「え?」



「けど今日部活できそう?」



「ん・・・今日は無理かも知れないな・・・

皆の顔が見たいから休みたくないんだけどな・・・

でも、他にもやらなきゃいけないこともできたし、今日は休むよ。

それに、これまでみたいに毎日は顔出せなくなりそうだって

手塚と桃に言っといてくれる?」



「それはいいけど。なんかあるなら俺も手伝おうか?」



「いいよ。英二は・・・大石にしかられちゃう」



「もぉ〜〜不二のためなんだもん、大丈夫だよ〜〜」



「クスっ・・・ありがとう。でもいいよ、一人でしなくちゃいけないことだから」



「そぉ?」



「あぁ・・・それよりエージ。今日の英語のテストがんばろうね」



「んぎゃ〜〜〜〜!忘れてた〜〜〜〜〜」



「あぁ〜〜。。。。ご愁傷様」













3週間後。氷帝高等部に不二の進学が内定した・・・













「不二、ちょっといいか?」



「え?あ・・・構わないけど。どうしたんだ?手塚」

昼休みに不二は手塚に屋上へ呼び出された。



「お前、氷帝へ進学するそうだな」



「えっ・・・もう君の耳に届いたんだ?すごいな・・・」



「いや、偶然だ。休み時間に顧問の所へ用があって職員室へ行ったら、

丁度、高等部の監督から苦情の電話があったようでな・・。

このところ、お前が忙しそうになにやらやっていたのは気になっていたが・・

監督(むこう)も不二をあてにしてたらしい・・」



「へぇ・・・それは光栄だな」



「全国メンバーの天才が上がってこないんだ、文句の一つも言いたくなるだろう」



「大げさだな・・・」



「不二・・・」



「みんなと離れるのは寂しいからね。随分悩んだよ」



「そうか」



「で、ギリギリになってしまったんだ」



「そんなにいいのか?・・・」



「え?氷帝が?」



「あ・・・いや・・・」



「あぁ・・・跡部か」



「あぁ」



「そうだね・・・物心付くか付かないかの頃からずっと一緒だった。

きっとそれが当たり前みたいになってしまってたんだろうね。

今思うと、僕の跡部への反抗期は、ここに進学を決めた一時だけだったような気がする。

喧嘩したわけでもなく、キライになったわけでもないのに、袂を分かつっていうことが

どういうことなのかを痛いほど知らされた。

全部を受け止めて、見つめなおして、それでもやっぱり僕らは、お互いに必要とし合ってるから、

また一緒に頑張ろうと思ったんだ。お互いが必要だってね。

いつまでも子供じゃないし、彼も僕も、自分に素直になったら結論は意外とすんなりでたよ。

僕らは僕らの戻るべきところへ戻って、そして二人で頑張るよ」



「そうか・・・」



「でもあの頃・・・君を好きだった気持ちは決して嘘じゃなかったよ」



「あぁ・・・俺もだ・・・俺は今もそれは変わらない・・・」



「手塚・・」見開いた深い青い瞳が手塚を射抜く。



「お前を想う気持ちはきっとあいつには負けないと俺は自負している

だが、俺はあいつの様にお前の全てを受け入れて愛する自信がない・・

きっとお前を束縛して、がんじがらめにしてしまうだろう

人が思うほど、俺は冷静でも大人でもない。

独占欲にしても、嫉妬心にしても・・・きっとお前を傷つけてしまうだろう・・・

俺はお前の笑顔が好きだ。心から微笑むあの笑顔が。。。

だから、お前の幸せのためにはあいつのもとにいるのが一番だと思う」

手塚らしくなくその声は徐々に消え入りそうになっていく。



「俺はそれでもきっとお前を求め続けるだろう・・・

だが、それを迷惑と思わないで欲しい。

お前はお前のまま、お前の思うように俺に接してくれればそれでいい」

そう言って手塚は強い瞳で不二を見た。






「手塚・・・僕はそんな価値のある人間じゃない

こんな僕に囚われていちゃ・・・君はいつまでたっても自由にはなれない

君には未来がある。誰よりも高く羽ばたいて、そして栄光を掴んで欲しい」



「あぁ・・・分かっている。だがな、自分の価値を分かっていないのはお前のほうだぞ?

お前はもっと自分を評価するべきだ。お前は乞われて止まないそんな貴重な存在だ。

幸せなって欲しい。そしてまた・・・いつか俺とテニスをしてくれ」



「ありがとう、手塚。君がいてくれたから僕は頑張れた。強くなれた」



「俺もお前がいたから頑張れた。常にお前の前に立とうと・・・・」



「向こうへ行っても頑張って。僕は跡部と、氷帝で、全国を狙うよ」



「お前達なら、きっと大丈夫だ」



「その前に、レギュラー獲らないとな・・・」

「でも、僕は決して負けないよ、必ず勝ち続ける。誓うよ手塚・・・君に。

僕に勝てるのは、他の誰でもない、手塚国光ただ一人だから・・・」



「天才にそう言ってもらえるのは光栄だな」



「天才か・・・僕はこんなに弱くて脆い人間なんだけどな・・・

ここへ来て、手塚やエージや皆に出会えたから頑張れたんだ。

ただ、それだけさ・・・」」



「いや、お前は確かに天才だ。俺が保証する。」



「いつかまた、君と一緒にコートに立てるように、僕はテニスを続ける。

そして、君に幻滅されないようにもっと強くなる」



「俺も向こうで頑張って、必ず成功してみせる」



「うん、きっと君なら大丈夫」





「不二・・・」

「え?」手塚が不二を抱きしめる。



「すまない、が・・・しばらくこのままでいさせてくれ」



「手塚・・・」



手塚の想いを感じて、不二はそっと手塚の広い背中に手を回し、その思いに答えた。

見上げる先の、漆黒の瞳は、切なげに揺れていた。

お互いの空間の間で無言で交わされる会話・・・

ゆっくりと近づく手塚の瞳に、不二は静かに目を閉じた。

手塚から下ろされる口付け・・・優しく・・・そしてそれは、とても切ないものだった。



「すまなかった。跡部にしかられるかな・・・」苦笑う手塚に



「大丈夫だよ、僕らはそんな柔ぢゃない」不二も苦笑いしながら答えた。



「そうか・・・」



「お互い頑張ろう」

不二が左手を差し出した。



「あぁ」と手塚も差し出す。

そして、二人は笑顔と共に、硬く握手を交わした。
























その頃氷帝中等部部室では・・・



「よぉ〜跡部。嫁さんこっちへ来るらしいなー。やっと別居生活からおさらばやん」

と忍足が跡部をからかう。



「っるせーんだよ!」



「ったく〜素直やないな〜。俺の忠告のお陰でハッピーライフを迎えることができるんやから

礼の一つくらいゆうてもろても罰当たらんやろ?」



「テメーのおかげでもなんでもないんだよ!俺たちの愛の力だ!分かったか?このバカ!」









は?

今・・・なんですと?







一瞬部室が凍りついた・・・・










「あ。」一同聞いて聞かぬふりをする。

跡部もやばいと思ったのか、さっと着替えを続けた。





「いや〜それにしても楽しみやな〜。あの別嬪さんと同じ学校やで〜〜♪

俺の人生もまだまだ捨てたもんやないな〜。なんやワクワクドキドキしてきたな〜」

と先ほどの跡部の発言を無視したように忍足が言えば



「そうそう!!あのフジと一緒にプレイできるんだぜ〜!!

超うれC〜〜〜〜い。」とあのジローまでもが大騒ぎしはじめた



「侑士の変わりにダブルスの相方やってもらおうかな〜」と向日まで・・



「あぁ〜俺一年待たなきゃいけないや・・・」と鳳。



「わり〜な長太郎。こればっかりはしょーがねーや。」と宍戸



「なに勝手に盛り上がってんだよ!テメーらには関係ねーだろ!あいつは俺のもんだ!」

傍で聞いていた跡部がたまりかねて叫んだ。



「なに一人で力はいってるねん。みみっちぃやっちゃな〜」



「ほんと。ほんと。不二さんはみんなの財産ですからね」

忍足と鳳が言ってまた盛り上がりだす。









ったく。。。どうなってんだよ・・・

もしかしたらここへくるのが一番危険だったかもしれない。。。

と跡部は頭をかかえる。

一瞬でも忍足に感謝の念を持ちかけたことを後悔した。

不二との高校生活に一抹の不安がよぎったのはいうまでもない。





























ブラウザの「戻る」でbackしてください