未来-2-
その頃、青学テニス部部室
「ねぇ、ねぇ。不二ぃ〜〜、こらからマックに行かない?」
「え?これからかい?相変わらずだな。英二・・・」
背中に飛び付いてきて、そのまましっかりとへばりついている菊丸に、
不二は苦笑いしながら言った。
「だって引退してから久しぶりに皆揃ったんだぜ〜〜」
引退してからも、なんだかんだと言って、3年の中では、よく集まることもあったし、
菊丸と同じクラスの不二は、用がなければ、いつも菊丸に付き合わされていたので
不二にしてみれば「また?」くらいな感じだったのだ。
「不二先輩行くなら、俺も行くっス」不二の返事を待たずに、越前が言った。
「ん・・・どうしよっかな・・」
背中の菊丸は「ね?」と念を押すように言い、越前は大きな瞳で「ね?」と訴えてくる。
挟み撃ちにされているような状態で不二が答えあぐねていたとき、携帯のメロディーが鳴った。
「だれ?だれ〜〜?」英二が不二の手の中の携帯の画面に表示された文字を覗き込んだ。
そして、「あぁ〜あ。残念無念。今日はパスっぽいね」と苦笑いをして不二から離れた。
「俺様ヤローっすか?」それを見た越前が、拗ねたように言った。
「リョーマ?」困った子を見るような不二に
「ちぇっ・・」と越前がそっぽを向いて一人ゴチた。
「自業自得だね〜〜おチビぃ〜」
拗ねない、拗ねないと、菊丸は、越前の頭をグリグリとしながら言った。
「はい・・・どうした?」」
『終わったか?』
「あぁ」
『もうすぐそっちに着くから、門のとこで待ってろ』
「分かった」
『今日はこれから用はねーよな』
「え?何それ・・・誘っといて・・・クスっ」
『煩せぇ・・・あるのかよ』
「いや・・・未遂かな?」
『なんだ?それ?』
「そのまんまだけど?」
『まんま俺ん家な。家に電話しとけ』
「強引だな」
『だと?』
「クスっ・・・了解」
『ちっ・・・』
肩を竦めながら苦笑いをして、家にメールを送っている不二に
「お迎え?」と覗き込むように菊丸がたずねた。
「ん。強制連行」クスッと笑って不二は答えた。
「ほら、やっぱり俺様・・・」越前は不貞腐れていた。
「リョーマ。今なんか言った?」
不二は宥めるような顔で越前の発した単語に突っ込みをいれた。
「なんにも〜」あさっての方向を向く越前。
「お持ち帰りか〜」少しうらやましそうな菊丸。
「ちぇ・・」帽子のつばに手を当てて越前は舌打ちをした。
「もぉ〜〜拗ねない拗ねない。おチビ〜〜」
英二がリョーマの頭を再び、グリグリしながら言った。
「じゃぁ、お先に。待たせたら煩いんだよね・・・。
皆、お疲れさま」と、微笑み、手をひらひらさせて不二が部屋を出て行った。
「なんかさ、いつもいつもここ一番で、跡部にかっ攫われちゃうよね」
英二が苦笑いをした。
「俺は諦めないっす」リョーマがきっぱり宣言する。
「そういうとこおチビはえらいと思うよ、なんかチャレンジャーって感じで」
「誰かさんは、諦めちゃったみたいだけどね」とちらりと手塚をみやった。
「くだらんことを話してないで、さっさと着替えんか」
「傷心抱えて、海外逃避行する人に言われたくないね」
とどめの一撃を加えてから、越前が部室を飛び出して行った。
「最近拍車をかけて言うようになったにゃ」英二が眼を丸くしていた。
「さ、英二、俺たちも帰ろう」
「うん、今日の数学の宿題、大石んちでしてもいい?」
「あぁ、じゃあ晩飯食ってくか?」
「やった〜〜♪」
「あ〜〜あ、マック食い損ねた〜」とぶつぶつ言いながら桃が部誌をしまう。
乾が手塚に「不二が高等部に進学する確立は五分五分・・・明日はもっと下がってるだろうな」
と独り言のように言った。。
しばらく間をおいてから、手塚もまた、独り言のように呟いた。
「不二の人生だ、あいつが跡部を選んだのだし、俺は留学する。。。
これはどうしようもない事実だ・・・俺にはどうすることもできない」
頭を振っているようにも見える手塚の背を見つめながら、乾はそれ以上何も言わなかった。
皆が校門に向かっている視線の先では
横付けにされた黒塗りの車に不二が乗り込もうとしていた。
「あぁ〜来てる。しかしいつ見てもすげーな、嫌味なくらいブルジョア」
「ちょっとうらやましかったりしますけど」英二に桃城が答える。その横で、
越前は憮然とした顔でじっと睨んでいた。
「遅せぇ・・・」
「すまない」
「どうかした?今日は急に・・っていつもそうだけど」
「煩せぇ・・・文句あるのか?」
「だれもそんなこと言ってないよ」
「だったら黙って乗ってろ」
「えらく暴君だな。。折角一緒にいるのに・・・何も話すなって?」
ムッとしたような不二の頭に手をやり、跡部はクイと自分の肩へ引き寄せた。
「俺は話なんかしねーでも、お前と二人でいるだけでいい。くだらねぇことで
拗ねてんじゃねぇよ」
「跡部・・・」
「しばらくこうしてろ」
「ん」
素直に答えて、身を預けてくる不二に、跡部は満足したようにうっすら笑みを浮かべると、
細い金糸のような不二の髪に指を入れて、感触を楽しむように弄るのだった。
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