欠けた左手


















跡部の左手が不二を、求める時





不二の右手が、跡部を求める。







幼い頃からずっとそうで


「ん・・」と言って、差し出される跡部の手を、追い求めるように、不二の手がそれを掴む。







ぎゅっと、強くお互いが握り締めあって、決して離れることのないように・・・・







それが、永遠に続くかのように







何度も何度も繰り返されていた。









けれど・・・




プツリとそれが途切れたことが・・・




一度だけあった。













それは




不二が、跡部と違う中学に進学した時




ライバル校同士という関係だった日々。

















「あん時はマジ、俺は左手が欠けちまったかと思ったぜ」

と跡部が不二に言った。



「それは僕もだよ・・・」



「よく言うぜ、自分からそうしたくせによ・・」



「だから凄く後悔した」



「嘘付け!」

そう言いながら、跡部は、不二の当時の浮いた噂の数々を、思い出していた。





「ほんとさ・・・いろいろあったのは、君の代わりの手を捜してたからだって・・・」

跡部の様子を察知した不二が言葉を返す。





「それにさ、そういう跡部だって、人のこと言えないだろ?」





「俺は、お前とはちげーよ。お前の噂は聞き飽きてたぜ・・・ったく・・・」





「違わない」





目が合って、少し間を置いてプッと二人は噴出した。





「ガキだったな」

「おこちゃまだったよね」





二人は同時に呟いた。













その当初、跡部は欠けた左手の、不二は欠けた右手の収まるところを探しているように。

お互いの影を重ねることができる相手を探して彷徨っていたが、

ある時期から、その意味の空しさを感じ、敢えてそうしようとしなくなった。





そして、それからそれまでが嘘のように、自分に素直に生きることができるようになった二人は、

また、お互いが求め合うように、欠けた手の収まる存在へと戻っていったのだった。









「素直じゃなかったな」



「お互いな」







「もう、欠けることはないよね」



「あぁ・・・俺もお前も・・・いい勉強になったろ?バカじゃねぇんだしな・・」



「クスっ・・・そうだな」









そして、跡部の左手が差し出されるのと同時に、

不二の右手が差し出されて、













お互いが引き合うように、その手を繋いだ







二度と欠けることはないその手で・・・


























ブラウザの「戻る」でbackしてください