友達以上跡部未満




















放課後、図書館で不二は、忍足と勉強をしていた。

跡部は、部長業務で最近、走り回っていた。

今日も、部活はないのに、部室に缶詰状態だ。


「はぁ・・」と、不二が手をとめ、て机に伏せた。

「どないしたんや。具合でも悪いんか」と忍足が覗き込む



不二は、その問いには答えずに、首だけを忍足のほうへ向けて、

下に敷いていない方の手を伸ばして、忍足の髪に触れた。

自分のテリトリーに他人が介在するのを嫌う忍足だったが、

不二だけに限って、いつも、したいようにさせていた。

『どないしたんや?言うてみ?』と優しい目を向けながら、

嫌がりもせずに自分を見ている忍足の前髪を、弄りながら、

不二は、いつもこうやって甘えさせてもらうことで、

随分と自分は救われていると、実感するのだった。







「忍足ってさ、いつも優しいよね?」と呟く

周りからは死角になるその席は共用の施設のなかでも穴場的な場所になっていた。

そこだけ、隔離された空間になる。



『そんなこと、あらへん・・・お前にだけや・・・』忍足は心の中で呟いてから、

「何かいいたいことあるんやったらゆうてみぃや、聞いたるけど?」

と、言って、そっと不二の頭に手をやった。



「なんとなく・・・いっつもそうだから・・・言ってみただけ・・」




深く蒼い瞳で、じっと見つめられ、心がハッとする。

手には、さらさらの髪の感触、微かに香る不二の匂い。

色白の透き通る肌に、桜色の唇。。

自分に触れている、華奢な指。

ふっと、力を入れたら、それだけで壊れ落ちてしまいそうに感じられた。





「それはな、お前が、人にいーっつも、優しぃしとるさかい、

あっちこっち、それがまわりまわって、返ってきてるんや。

たまたま、お前に返す番が、俺やったんやと思うけどな・・」

「じゃぁ、今度は君に、僕がお返しなくちゃ」とクスクスと笑う

「今、こないしとるお前の幸せそうな笑顔で、十分や。おおきに」

そう言って、忍足は優しく微笑んだ。




カチャ・・・

不二が、忍足の眼鏡をはずす。




「忍足の目、綺麗だね・・・凄く。」

「そおか」

「引き込まれそうだよ・・・」

「そぉか」

「眼鏡、外した顔もいい・・・」

「おおきに」

「君が居てくれて、よかった」

「不二・・・」

「ほんと・・・良かった・・・」

「跡部・・・最近、忙しいからなぁ・・・よう我慢してるな・・・」

忍足は、そう言って、不二の頭を優しく撫でた。



「仕方ないから」

「仕方ないんか・・・」

不二は、心地よさそうに、忍足の手の感触を感じていた。

無防備な不二のあどけない顔を、こんな間近で見ることができるのは、

きっと、跡部の他に、今はこの、忍足しか居ないだろう・・・







「忍足が、こうして一緒にいてくれるから・・・それでいい・・・」

「俺は、副部長やから、たいした仕事ないさかい・・・俺みたいなんで良かったら、

なんぼでも代わりに居てやるけど・・」

「僕は、いつも君に甘えてばかりだね」

「そんなことあらへん、お前という存在に、結構助けられとるよ」

忍足の言葉が、不二には、胸の奥に染み渡るように感じられる

「忍足・・・」射抜くような瞳に、さすがに忍足は、胸が詰まった。

「そんな目・・・したらあかん」忍足が、目を逸らしがちに言う

「ねぇ・・元気の素・・・くれない?」不二は、そう言って目を閉じた

「しゃーないな、このお姫さんは・・」

そう言って優しく、忍足は不二の唇に、キスをした。

気遣うような優しいキス・・・けれど長く・・・





「・・・これでええか?」

「ん。ありがとう」いつもの微笑みが戻る。








と、直ぐに、「ったく・・油断も隙もあったもんじゃねーな」と、

背後から跡部の声がした。


「油断も隙も、作るほうが悪いんやで」そう言うと、忍足は、荷物をまとめて立ち上がった。

「クスっ」自分を見上げながら笑う不二の頭を、忍足はクシャとしながら




「王子さんも来たことやしな、跡部未満の俺は、『速やかに撤収』や。しっかり甘えや」

と言い、跡部の方を向いて、

「あんまり、お姫さんに寂しい思いさせたらあかんで、ほならなー」

背を向けて、手をひらひらさせながら、帰って行った。

「油断も隙も・・・か・・・」呟く跡部に

「忍足だからだよ」と不二も呟くように答えた。

「ふんっ・・・」まぁなと、跡部は言葉を飲み込んだ。

「君も・・・だろ?」

「あぁ」

「でも、その彼が、一番分かってる・・・」




『跡部未満・・・』忍足の言葉が、跡部の頭に思い出された。




「そうだな・・・」と呟いてから、「悪かったな」と、跡部は、さっきまで忍足がいた席に座った。

「終わった?」

「あぁ、しち面倒くせー仕事は、今日で終わりだ」

「頑張ったじゃん」

「あぁ、1週間か・・・」少し上を見ながら跡部が、しみじみ言う。




跡部は学校で、休み時間も、新入部員の資料云々を整理していた。

目を通すだけでも大変な上に、既存部員も多いため、資料のボリュームも半端ではない。

早く終わらせたかったのもあって、帰宅後もファイルを持ち込んで整頓するのに、

不二と過ごす時間がなくなっていた。





「思ったより早かったけど・・・寂しかった・・・」俯いて不二が言う

「それは俺もだ。」そっと不二の頭を撫でる。

「早く終わらせたかったからよ・・」

「知ってる」

「あぁ、そうだな・・・珍しくお前が、わがまま言わなかったもんな」

「終わったんなら・・・我侭解禁だね」

「あぁ」

「じゃあ、今日の夜は、一緒に居て」

「あぁ・・・帰るぞ」

「うん」







人気のなくなった図書室で、軽くキスを交わし、

二人は、寄り添うように家路へついた。

























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