ほっと一息



























そよそよ・・・



そよそよ・・・








さっきまでの厳しいトレーニングが、ウソのように静かに穏やかなひと時。

一人静かに木陰のベンチで、不二はぼんやり空を眺めていた。








「なんだかなぁ・・・・」








久しぶりに弟、裕太と一緒にテニスができる・・・という楽しみ以外、

今のところ、これといって、この合宿自体に心躍るものがなく、

不完全燃焼気味な自分を、もてあましていた。








「なんで違っちゃうかな・・・」







またポツリと呟いて、小さく溜息をついた。




くじとか、あみだとか、じゃんけんとかならまだしも・・・・

方法云々より、自分のまったく関知しないところで、振り分けられた班編成に、

どうしても納得しきれない思いが、消化不良を起こしていた。






あっちはどうだか・・・

どう思ってるんだか・・・





同じ敷地に、昨日からいるのにもかかわらず、食事の順番も、風呂の順番も、

ましてや、部屋まで違うとなれば、、グループの違うメンバーとは、会うこと自体が

不可能に近い話で、眠りに着く前に、ちょっとしたメールのやりとりをするくらい・・・






これなら、普段のほうがよっぽど一緒にいられる・・・






思ってみても仕方ないこと。

第一、そんなことを彼に言ったものなら

「お前は何しに来てるんだ」と、小言を言われるに違いない。









「そんなことって、言われたってさ・・・」愚痴っぽく不二の口をついて出た一言に




「どんなことだ」と声が返ってきた。




「え?」




「ンだよ」




「えぇっ?!」




「バケモン見たみてぇな、顔すんなよ」

ムッとした顔をしながら、跡部は不二の隣にドカリと腰をかけた。




どうしたの?と言えず、「僕がバケモン見た時の顔って、知ってるわけ?」と憎まれ口を叩いてしまう自分に

『素直じゃないね』と不二は苦笑いをした。




「想像はつく・・・俺達も休憩だ」と言って、跡部はベンチに凭れて、空を見上げた。





素直じゃない今の自分のことを見透かして、さり気なく答える跡部に、

不二はたまらなく、心地よさを感じるのだった。

幼い頃からずっとそうだったように、成長しても変わらない跡部とのやりとり。

他の誰も、彼の代わりはならない。

彼だけが、多くを語らずとも、心地よい空間を作ってくれる唯一の存在なのだ。



それは、跡部にとってもそうだった。



だから、引き寄せられるように、その場所へ足が向いたのだった。











「へぇ・・・」と呟く不二の目は、跡部の視線と平行のまま、

よくここが分かったね?の言葉をのみこんで、視線を空に彷徨わせていた。





「勝手に足が向いた」跡部はポツリと言った。



「そうなんだ・・・」お見通しってことだなと、不二はクスっと笑った。



「あたりめぇ・・・」俺様を舐めんなよと、跡部が言う。



「美味しくないから、そんなことしない」



「へぇ・・・そりゃ初耳だ。覚えといてやるよ」不敵に微笑む跡部に



「意地悪・・・それとこれとは別。嫌ならもう絶対舐めない」と不二は負けずに言った。



「お前なぁ・・・」呆れたように言う跡部に



「久しぶりだね」と不二が言った。





話が飛ぶ飛ぶ・・・・





『相変わらずだな』と思いながら、跡部は「昨夜のメール以来か?」と答えた。



「あれもカウントするの?」と言う不二に



「俺にとっちゃ、かけがえのない瞬間だけどな・・・」と跡部は静かに答えた。









「・・・そうだね」予想外の跡部の素直な返答に、不二は答えて俯いた。







ポスっと、頭に優しく乗った跡部の手が、不二の髪を梳いてゆく・・・





燃えカスが綺麗に燃焼されていき、

不二の胸につっかえていた思いが、消化されていった。









「佐伯と組んだって?」



ふっと、現実に戻されたような一言に



「え?」と不二は声を上げた。









「ま、同じ組になれなかったのを、忌々しく思ってるのは、お前だけじゃねぇってことだ」

そう言うと、跡部はすっと立ち上がった。







「跡部?」と見上げる不二の顎に、手を添えると、そっと優しくキスをして

「時間だ」と言って跡部は、背を向けて去っていった。







その背を見送りながら、不二はそっと唇に手をあてて

「ずるい・・・」と呟いた。



















「兄貴っ!何してんだよ!」

こちらも時間・・・

裕太が、自分を探しにやってきた。



「今行く!」不二は駆け出した。



さっきまでとは、全然違う自分に、心の中でふっと笑った。



ほっとする一息をつかせてくれた、ずるい愛しい人を想いながら・・・・













ありがとう。跡部・・・・



























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