当然の必然

























「あのさ・・・」





「ん?」





「聞いていいかな?」





「ダメだ」





「もぉ・・・」





「・・・たく・・・どーせくだらねぇことに決まってンだろ?」





「どうして、そう決め付けるかな?」





「お前が突発性に言い出すことは、大体そういうもんだって相場は決まってンだよ」





「誰がそんな相場を決めるんだよ」





「俺様に決まってンだろ」





「勝手に決めるな」





「何年一緒にいると思ってンだ。アーン?」





「ムカつく・・・」





「ふんっ・・・」















休日のブランチ

跡部家のテラスで心地よく降り注ぐ太陽の下

不二は跡部とお気に入りのアッサムをストレートで楽しみながら

他愛ない会話を交わしていた。














その日、朝から姉の由美子が焼いたブルーベリーパイを手土産に、

不二がふらりとやって来た。



別に特別な予定もなく、たまたま屋敷に居た跡部だったが、連絡もなしに

ひょっこり現れた不二に、もし自分がいなかったらどうするつもりだったのかと

呆れる思いをしたのだった。





「別に、君が居ないなら居ないで、僕はここでおいしいお茶を楽しんで、

もういいと思ったら勝手に帰るだけだ」

しらっと言った不二が跡部には憎たらしくて



「だったら今も一人で居ろ!」と思わず口にしたほど・・・



すると、今度は飼い主に捨てられた子犬のような目で「それ本気で言ってる?」と

自分を見上げる不二に「言って欲しいなら言ってやるけど・・・」と

弱気な返事を返してしまう跡部だった。



「よかった・・・冗談か」ほっとしたように呟きながらも、ニヤリと笑みを浮かべて

自分を見る不二の目は確信犯そのもので、跡部は心の中で大きなため息と共に

そんな不二に振り回されながらもそれが心地よくて、そんな不二が好きで仕方ない自分に

負けを認めざるを得なかった。















「明日、追い出しコンパで最後の試合するんだ・・・」不二がポツリと呟いた。





「へぇ・・・」跡部は関心なさ気に短く答えてから『なんだそうか』と思った。





「誰と当たるか分からないけど・・・」





「誰でもいいんじゃねぇの?どーせ最後なんだし」





「それはそうなんだけどさ」





「ふん・・・どーせ最後の試合のくせに相手選ぶのか?」





「ちょっと待てよ・・・跡部。さっきから、どーせ、どーせって・・・」





不二の心に引っかかっているだろうことをわざと口にしていた跡部に不二が

困り怒ったように言った。





「ほんとのことだろーが」眉を僅かに上げて跡部は不二に言った。

今の跡部には、不二の深層心理が可笑しいほどに分かる。





「そりゃぁ、跡部はいいよな。今のまま上にあがるんだしさ・・・」

本音を言うつもりもなかった不二だが、知らず知らず口をついて言葉が出てきた。





「お前も、あっちで上がりたいなら上がりゃぁいいだろ。まだ間に合うんじゃねぇか?」





「だれもそんなことは言ってない」痛いところをつかれて、不二は拗ねたようにうつむいた。





「俺に何を言って欲しいのか知らねぇが、前も向けねぇ奴が、ちょっとばかりセンチになってるからって

何か言ってやるほど、お人よしじゃねぇ。分かってんだろーが」呆れたように跡部は言った。





「分かってるよ・・・」俯いたままの不二の頭に、跡部はしょうがねぇなと優しく手を置いた。





「・・・・ったく・・・・お前の言いたいこととかさ、考えてるとこくらい分かるけどな・・・

ンなことで止まってる場合じゃねぇだろーが」

そう言って跡部は不二の頭をクシャリとした。





「ん・・・」





「お前は明日、青学でのお前に区切りをつける。それはお前にとっての単なる

通過点にしかすぎねぇ・・・大事なのはそれから先だろ?」

諭すように言う跡部の言葉が不二の心に染みていった。





「俺が待っててやってんだ・・・一緒に行くんだろ?もっと高いとこによ」

分かっていても言って欲しかった言葉を言ってくれる跡部に、不二は泣きそうになりながら

黙ってうなずいていた。













「俺の知らねぇお前の三年間を持って来い・・・不二。そっくりそのまま俺が受け止めてやる」











「うん・・・」最後に大きく頷いて、泣きそうな笑顔を向ける不二だったが、跡部はその中に

さっきまでの迷いがなくなっていることを感じ、優しい笑顔を返したのだった。













慣れ親しんだ仲間達との別れ・・・

感傷的になるなというほうが酷なこと・・・

けれど、甘やかしていつまでも浸らせてやっている場合ではなかった。



突き放しながら包み込む・・・

跡部の不二に対する操縦術は、きっと跡部にしかできないものなのだろう・・・

























「で?なんだったんだ?」

再びまったりとした空間を取り戻し、お代わりの紅茶をカップに注ぐ不二に跡部は

思い出したかのように尋ねた。





「ん・・・」不二は苦笑いをする





「んだよ・・・はっきり言えよ」さっきは聞くつもりだったんだろ?と跡部は言った。





「どうして・・・君は僕のことを好きなのかなってさ・・・」ポットをテーブルに置いて

チェアーに凭れながら不二は言った。





「はぁ?」跡部が呆れたような声を上げた。





「はぁ?じゃないよ」不二が少し拗ねたように言う。





「今更何言ってんだよ・・・」物心ついたころからずっと一緒で、『好き』だと言い続けてきているのに

この期に及んで何を言い出すかと思ったら・・・・跡部は一瞬頭を抱えそうになった。





「好きとか愛してるとかさ・・・いろいろ言ってはもらってるけど。どうしてそうなのかって

聞いたことなかったよなぁって思ったんだ」違う?と不二が言った。





そういえばそうだが・・・

「ばっかじゃねぇの?」跡部はバツ悪そうに呟いた。





「わるぅございましたね。バカで」ちょっと聞いてみたかっただけじゃないかと不二はぷぅっと拗ねた。





確かに・・・不二からは跡部のどこが好きとか何がいいとかどういうところがどうとか

いろいろ言われてはいるが・・・跡部はふっとため息を一つついてから拗ねてそっぽを向く

不二の顎に手を当てて自分に向けさせるとぐっと引き寄せながら





「何で空が青いのかだとか、人が息をするのは何でだとか・・・

今更お前はそういう事を俺に聞くのか?」と言った。





「え?」と言う不二を跡部は真剣な顔で見据えていた。





「お前のさっきの質問はな。俺にとってはそういうレベルのことなんだよ」

ったく・・・と言ってから跡部はそっと不二の唇に自分のそれを重ねた。





「んっ・・・」不二が満足そうに甘い声を上げる。





ぴちゃ・・・っと音を立てながら角度を変えつつ跡部は不二の口内を深くくまなく堪能した。

















唇を離した跡部を不二はうっとりとした目で見上げた。

跡部はふんと鼻で笑いながら、優しく不二を見つめる。



ふんわりと不二が微笑みを返すと再び跡部はキスをおろした。



跡部の首に手を回した不二を跡部はさっと抱き上げる。



不二を抱いたまま、部屋の奥へと向かう跡部に、不二はその目的を知る。




「明日があるんだからね」恥ずかしそうに言う不二に





「分かってる。しょーがねぇから手加減してやる」と跡部は答えたのだった。



















明けない夜はない

見上げる空は青く

太陽は輝き





愛すべき人がいる











理屈も理由も何もない



ただ、その人が愛しいだけ













跡部が自分をそうして愛してくれていて

そして待っていてくれるなら





きっと何でもどんなことでも

乗り越えていける



立ち止まる訳には行かない



だって



もっともっと先へ

未来へ



二人で共に生きようと誓ったのだから・・・・





















限りない跡部の優しさとぬくもりに包まれ



不二は幸せを感じるのだった。







































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