HI・KA・RI



















どうなるか分からねぇとかぬかして、

先のことをうだうだ悩むくらいなら、

黙って俺についてきやがれ。











跡部と付き合うようになって、暫くしたくらいだったか、

僕が男同士だからとか、跡部は金持ちの御曹司だからとかと

いつかは別れなくちゃいけない時が来るって

一人で凹んでドツボってた時に『しゃーねぇーな』って

僕の頭に手を当てて、跡部が僕に言った言葉。



僕はそのあと、跡部が困るくらい泣いたんだっけ・・・







嬉しくって








未来は漠然としたもので、特に何かに執着しない僕にとっては、

そこはかとなく曖昧なものだった。



何が欲しいとかどうして欲しいとか・・・テニスにしても勝負にしても、

勝ちたいという強い気持ちは滅多に感じることはなくって、

ただ、すごい相手と対峙したときに感じる、ギリギリの緊張感が楽しかっただけだった。





跡部と出会って、『付き合え』って言われたときも、

スキとかキライとか僕にはどうでもよかった。

ただ・・・『俺だけのモンになれ』って言われたことに凄く興味が沸いて、

男の僕にそんなこと言う、金持ちの道楽息子の戯言の真相が知りたかった。









でも


駆け引きなんて・・・・

してたつもりでいたのは、僕だけだったようだ。



跡部に興味を持った時点で、とっくに僕は彼のモノになっていた。

自信に満ちた態度で、僕を傍に置くのを当然と振舞う彼の傍に立ったことで

僕は彼だけのモノになっていた。



俺様な跡部景吾が・・・僕だけに、信じられないような優しさを見せる。

使い捨ての暴君が・・・僕だけに、壊れ物を扱うかのように接してくれる。








夢だと

思わないほうがウソだろ?

跡部の浮名なんて、イヤというくらい耳にしてたし、

彼の取巻きのすごさなんて、うんざりするくらい見てきた。



容姿端麗・沈着冷静・頭脳明晰・傍若無人・・・

絶対的な存在感と揺るぎない自信

それを証明する実力とバックグラウンド

これほどまでに完璧な人はいないと・・・

そう思わせて止まない跡部景吾が選んだのが

こともあろうに僕、不二周助・・・・







どうしてかな?

なんて考えてると、決まって跡部は僕に

『おまえは、自分の価値を全然分かってねぇな』って不機嫌そうに言ってから

『ま、そんな天然っぽいとこがいいんだけどな』って嬉しそうに微笑むんだ。

そして最後に僕に向かって、

『俺に愛想笑いはするな。素で居ろ。お前の全部を曝け出せ』と言う。

凄く真剣な目で・・・








どこまで信じたらいい?

どこまではまったらいい?

どこまで愛したらいい?



考えれば考えるほど、深みに嵌っていく自分が分かって

彼にとらわれてしまっている自分が怖くて

彼を失うことが怖くて

気が狂いそうになる







段々僕は彼と居ても

共に過ごす幸せよりも、失ってしまう怖さに押しつぶされそうになっていた。



そして、つい・・・ポロリと口にした不安









それに彼は、揺るぎない瞳を僕に向けて



『道は自分で作るもんだ』と言い放って、

『どうなるか分からねぇとかぬかして

先のことをうだうだ悩むくらいなら

黙って俺についてきやがれ』

と静かに言ったんだ。







怖くて分からねぇなら、俺から離れるな。

一緒に居て幸せと思えるなら一緒にいりゃぁいい。

不安なら俺を信じろ







僕から不安がなくなるまで

跡部はずっとそう言い続けてくれた。









跡部・・・



君は僕の前に立ち



僕の道を照らす光















全く不安じゃなくなったっていえば

それはウソになるけど

君が居るなら

君の手が僕に向かって差し出されているなら

僕はその手を掴んで一緒に歩いていきたいと思う







君は僕の光だね

そう言うと決まって跡部は僕に



『それはお前のほうだ』って言う









きらきら光る君という存在がまぶしすぎるように

思えるときもあるのに



『そんなこと・・俺はしょっちゅうだ』って・・・・







だったら僕はどうすれば君と対等になれるんだろう



たとえそれが無理でも



僕にできる精一杯のことを

君にしてあげたいと思う







『バーカ、俺は何にも要らねぇんだよ。

お前がそうやっていっつも本当の笑顔で俺の傍にいてくれりゃぁ

それだけでいいんだ』

呆れたように笑いながらいつも君が言う決まり文句。









不可能を感じさせないその強さに僕はどれ程救われただろう・・・











ありがとう



跡部



君に出会えてよかった



君を好きでほんとうによかった





























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