陽だまりランチ
昼休み、弁当を抱えたジローが、いつものように、不二のクラスへやって来た。
今日はいつもより、授業が長引いたので、のんびり屋のジローには似合わぬダッシュ。
「不二ーーっ!!って・・・・あれ?」
教室の中に、お目当ての不二の姿が見当たらず、
「なぁなぁ、忍足。不二は?」
と、授業の片づけをしている忍足のところへ、キョロキョロしながらやって来た。
いつもなら、その忍足の隣に座って、微笑を湛えている不二が居ない。
ついでに言うと、その不二の隣で、ふんぞり返って座っている俺様の姿もない。
「あぁ・・・なんやさっき、跡部が連れて行ったけどなぁ・・」
忍足は、席に着いて、机の上に弁当を広げだした。
「えーーーっ!!跡部のヤツ・・・・ずっこいな。独り占めかよ・・・」
ふくれっ面で、ジローがぼやいた。
「せやから。跡部には敵わへんって、言うとるやろ?ええ加減学習しーや」
忍足は、苦笑いしながらジローに言った。
「お昼は一緒に食べるって、約束してるのになぁー」
ジローは、まだ納得がいかないみたいだった。
「たまには、二人っきりで、昼飯食いたいんちゃうか?邪魔したりなや」
言い聞かすように、忍足がジローに言った。
「俺の楽しみのひと時を・・・」
「ははは・・・」
「跡部なんか、中学ン時みたいに、一人でゴージャスなの食ってたらいいのにさ、
不二がいるからって、弁当ライフなんてさ・・・」
「まぁな・・・あの跡部が、弁当食うなんてことは、あの頃は、
全然想像もつかんかったけどな・・・
不二と一緒やと、弁当箱つついとっても、違和感ないのが不思議やわ」
「男は、冷や飯食わねぇとか言ってたのにさ・・・」
「不二が作ってきた日なんか、ほんま、嬉しそうに美味そうに、食ってるもんな」
「あったりまえっしょ!不二の料理は最高なの!」
そう言ってから、「はぁ・・・」っと溜息をついて
「ったく・・・しょーがないなー」と、言いながら、ジローは、忍足の隣である不二の席に腰を下ろした。
「なんや・・・自分の教室もどらんのか?」と聞く忍足に
「忍足も一人だろ?可哀想だから一緒にいてやるよ」
二カッっと笑うジローに、忍足は、はぁ・・・っと溜息をついて、
「昼からの授業は、フケるかも知れへんからな、待っとっても、帰ってくるかどうか分からんで」と言った
「げぇ・・・マジ、ムカツク。跡部め・・」
「っていうか・・・無理やって・・・」
呟く忍足の声は、ジローの耳には、届いてないようだった。
一方、ラブラブモード発動中の二人は、いつもの指定席である屋上の
目立たない一角で、仲良くお昼のひと時を過ごしていた。
「今頃、ジローの奴、お前の教室で騒いでんじゃねぇの?」
跡部が、ニヤリと笑って言った。
「忍足が居るさ」
「フンっ・・・・生贄かよ・・・」
「違うとは、言わない」
「ま、いいけどよ・・」
「こんなにお天気もいいしさ。たまには、二人でさ、陽だまりランチってのもしてみたいじゃん?」
光りの中で、可愛らしく微笑む不二に、跡部は優しい微笑みで答えた。
「そうだな・・・たまにはいいかもな」
横向きに寝転んで、上半身を起こした状態で、跡部は目の前の不二に見惚れていた。
跡部の傍に不二は座って、膝の上に作ってきた二人分のお弁当を広げて、
幸せそうに微笑んでいた。
「で・・・次は?」と不二が聞く
「そいつ・・・」と、跡部が一言だけ言うと、不二は、にっこりと微笑んで、
細い指先で操る箸で、一口分摘み、そっと跡部の口元へ運んだ。
「どぉ?」小首をかしげて覗き込む不二に、
「あぁ・・・いいんじゃねぇ?」と跡部が答えた。
「よかった」
「お前が作るもんだからな」
「って、・・・こんなに、お行儀の悪い子に言われてもね」
「うっせーよ」
まったりとした時間の中、そんなやりとりが続き、最後の玉子焼きが一切れ、
弁当箱の隅に残った。
「食べる?」
「お前食えよ」
「君は?」
「食っとけって・・・」
「じゃぁさ・・・半分っこしない?」
「あぁ・・」
綺麗に半分に割った一つを、不二が跡部の口へ運び、残りを自分の口へほりこんだ。
そして、二人は見合って、微笑んだ。
「まだ残ってるけどな・・・」と言う跡部に、
「え?綺麗に済んだよ」と、不二が弁当箱を跡部に見せた。
「残ってるって・・・」
「何?」
「それ・・・」と言って、跡部が指差した。
「もぉ・・・」僅かに頬を染めた不二が、ふんわり笑ってから、跡部の方へ体を傾けて口付けをした。
そしてそのまま、二人は、幾度も啄ばむような口付けを交わした。
「クスッ。これでいい?」
「あぁ・・・ご馳走さん」
そう言って跡部は、不二に手を伸ばして抱き寄せた。
「跡部・・・」
「愛してるぜ・・・」
「ん・・・僕も・・・」
午後の陽だまりの中、二人は、暫く抱き合ったまま、満たされた想いに浸るのだった。
「フケるんかと思った・・・」
午後の授業に滑り込んできた不二に、忍足は意外そうに言った。
「おかげさまで、十分堪能できたからね」ニコリと微笑む不二に
「そぉか・・・それやったら、ええわ」
昼休み中、ジローのグチに付き合って、少しお疲れモードだった忍足だが、
不二のこの笑顔で、全てが癒される気がするのだった・・・
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