フェンスの向こう
















わーわー

きゃーきゃー





今日も、氷帝男テニのレギュラーコートの周りは、いつものような賑わいを見せていた。

キャラリーがびっちり幾重にもへばりついて、それぞれがお目当ての相手に向けて、

声援だの歓声だの、黄色い声を浴びせていた。





中でも圧倒的な割合を占めるのが跡部と不二のファン達。

全国区の二人目当てで、学校の内外問わずのギャラリーが、連日押し寄せては、ひしめき

合っていた。











「しっかし・・・いつもながらうるせぇっつーか・・・すげーよな」


「しゃーないわ。今まで青学に行っとったのんまでこっちに来るようになったんやさかい。

なんもかんもが倍増や。ま、大概、俺も慣れたけどな」





ギャラリーたちを眺めながら宍戸と忍足が話していた。



「クソクソクソ・・・・」向日はちょっとご立腹気味。


「タメはろうなんてムリってもんだぜ?」とそんな向日を見て宍戸が苦笑いをした。


「分かってる。分かってるけど・・・けどけどけど・・・・」まだ納得がいかないのか、向日は

一人ごちを続けていた。







「せやけどまあ、この喧騒を全然意に関せずで居れる、当の本人なあの二人には、ほんま、

ある意味大したモンやて感心するわ・・・」


「まったく・・・」


忍足と宍戸の視線は、ギャラリーから、今度はコートで際どい打ち合いを続けている

跡部と不二に移された。

全く耳にも目にも入って来ないような様子で、二人は脅威の集中力を見せ付けるように

二人の世界を展開し、たった一つの黄色いボールを、絶妙の駆け引きをもってやり取りを

していたのだった。思いも、言葉も何もかもをその小さな球に込めて、

相手の難しい位置へと送り込む。それを、無言で全て受け止めるように、

決して逸らすことなくお互いが受け止めていた。


実に無駄のない、華麗で流れるようなラリー。

テニスを知っている者でなくても、それがいかに絵になるか、一目で分かる程、見事なものだった。







暫くして、打ち合いを終えた二人がベンチに下がってきた。


「お前ら、何とっとと休憩してやがんだよ」跡部が一同をギラリと睨んで言った。


「なんや今日は一段とじゃかましぃ気がしてな。毒気に当てられてしもぉたわ」

と忍足が苦笑いをして言った


「何ダセーこと言ってんだよ」と跡部が言う


「お前らと神経の太さがちゃうんや」と忍足が言うと


「クスクス・・・」と不二が笑った。手にしたタオルでさっと額を拭うと、

それを跡部に手渡した。跡部はそれを当然のように受け取ると、自分の首にさっとかけた。

そして先に口にしていたスポーツドリンクの容器を不二に手渡した。

不二はそれを一口、口に含んでから、

「僕には何も聞こえないけど・・・ま、誰がどれだけ束になってかかってきても、

跡部は渡さないし、渡すつもりもないからさ」

と一瞬だけ開眼した目でしらっと言った。





聞いた一同の背中には寒気が走る。





「あったりめぇだろ・・・くだらねぇちょっかいだしてきやがったら

俺がまとめて皆殺しだ」と、ふっと唇の端をあげて笑った跡部が不二の肩に手を回して

ぐっと引き寄せた。













「はいはい・・・・」と忍足は二人を見て諦めたように言った



「宍戸・・・・今の会話は・・・・」



「あぁ・・・分かってる。トップシークレット・・・」



「やな・・」



二人は俯き加減にやれやれと呟きあった・・・








そして跡部と不二は、またギャラリーの喧騒の中、コートへと戻っていくのだった。


















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