駄々っ子が愛しくて


















「・・・あのさ」







久しぶりに、不二の部屋に来ていた跡部。

不二のお気に入りのロッキングチェアーに、不二のお気に入りのクッションを

背に当てて、身を預けるようにゆらゆらと、これまた不二のお気に入りの古典を

片手に、目だけで字を追っていた・・・





跡部の足元あたりの床のログの上に、腹ばいに寝そべって、現在の一番のお気に入りの

魔法使いの話の原語本を読んでいたはずの不二からの甘えるような声に







「ん?」

と、本から跡部が目を離すと、いつの間にか自分の正面に、不二がひざ立ちで寄ってきていたのだ。







「キスして」小首を傾げてねだる不二が可愛らしくて、跡部はすぐに

「ん・・・」と、軽く触れ合うだけのキスでそれに応えた。















「もっと」ちょっと拗ねたように、唇を突き出す不二に

「あぁ?」と跡部は一瞬、眉を吊り上げながら言った。

「聞こえた?耳無い?」しらっと言う不二に

「だと?」今度は、眉間に皺を刻んで跡部が答える。

「ほら」そんなことは、意に関せずといった風に、不二は跡部に催促をすると





「・・・ったく」

やはりその可愛らしいおねだりの仕草と、いたずらっ子な猫のような不二が愛しくて、

しょうがないなと跡部は、ため息をついた。

そして、

薄く開いて誘われるそこへ、ちょっと噛み付くように、今度はキスをしたのだった。






「もっとちゃんと」

唇が離れた途端、今度はちょっと、子供を叱るような言い方で不二は言った。




「はぁ?」流石の跡部の甘い空気が凍り始める。

「日本語分かる?」とどめのような一撃・・・

きっと不二以外の何人たりとも、同じせりふを口にしたのなら、

その場で存在をきれいさっぱり抹消されるであろう態度



「お前なぁ・・・」跡部は呆れながら、ため息を吐きつつ、不二をじっとにらみつけた。

何が不服だ?と眼で訴えながら・・・

「ん」

跡部の無言の訴えなど、木っ端微塵に却下するように、不二は

また唇を少し突き出して、跡部を誘う。






「だぁーーーーっ、ったく」

悔しいがそんな不二に勝てるはずもなく、勝つつもりもない跡部は

結局折れてしまう自分自身に声を上げて、無駄な抵抗をするのを諦めた。







跡部は不二の脇に手を入れて、さっと自分の方に引き寄せると、

そのまま自分の膝の上に不二を跨らせながら座らせた。

そして、今度は絡みつくようなキスを不二に与える・・・

すぐに応える滑らかで熱を帯びた不二の舌先を味わうように、

己のそれで、跡部は執拗に追い詰めた。







「んふっ・・・」

堪らなくなったのか、不二が艶を含んだ甘い息を漏らす。

そして、主導権を奪取するが如く、身じろぐ不二を、跡部が楽しむかのように、唇を貪り

さらに追い詰めていった。





「んんっ・・・」

ピチャっと音を立てて、跡部がようやく苦しそうな不二を解放してやると

不二は、上気した頬に潤んだ瞳でちょっと恨めしそうに跡部を見つめるのだった。



跡部は、そんな不二を見てしてやったりな笑みを浮かべる。

「ふんっ・・・」




「なっ・・・なんだよ・・・」少し下から上目遣いに不敵な笑みで見つめられて不二は

僅かに体制を引き気味に跡部に言った。


「テメーで仕掛けといてそれかよ・・・ざまぁねぇーな」

「煩い」

「ったく・・・」跡部はため息をついてから、意外にも不二を優しく腕に包み込むように

抱きしめると「で?足りたのかよ」と囁く様に尋ねたのだった。

「ん・・・」不二はそれが嬉しくて、心地良くて・・・

そのまま跡部の肩に顔を埋めるとぎゅっとしがみついた。

「そうか・・・」と言いながら、跡部は不二の背をあやす様に、ポンポンと軽く叩いてやると

母に抱かれる幼子のように、不二の呼吸はみるみる穏やかに落ち着いていくのだった。






「・・・欲しかった」

「ん?キスか?」

「うん・・・少し大人のやつ・・・」

「ふんっ・・・いつも、もっとスゲーこと、やってんだろ?」

「それはそれ、これはこれ」

「そうか・・・」

「また、『意味分かんねぇやつ』とか思ってる」

「いや・・・いいんじゃねぇの。たまには・・・」

「よかった・・・」

「くだらねぇこと心配すんな」

「ん・・・・」

「大丈夫だ」

「ん・・・・」




いつの間にか、寝息を立て始めた愛しい人に、跡部は苦笑いを零した。




眠てぇって駄々かよ・・・ガキ越して赤ん坊だな・・・





そう思うが、そう思いながら、こうやってる自分が好きで堪らなくて、

自分をそうさせてる不二が何よりも可愛くて、好きで好きで仕方ない

世界中の女が、束になっても敵わない、不二の摩訶不思議な魅力





あぁ・・・・足がしびれる前に起きてくれよな・・・・






と心の中で一人ゴチながらも、それでも心地良さそうな可愛い人の眠りのために、

椅子を揺らす跡部様・・・・・だった。





























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