チャンス到来 - 1 -


















「・・・だからさ・・・ね?」


「でも・・・」


「ん・・・僕には突っ込んだところは分からないけど、でも、

このままでいても、いいことなんか何もないと思んだ。

子供の頃からずっと彼を見てきたけど、一度言い出したら、

他人がどうこうできるようなそんな人間じゃない。

一箇所に縛り付けようなんて、たとえ、彼の家族でも無理なことさ

自分が気に入れば、一度に100人とだって関係を持つだろうし

そのことに罪悪感なんてこれっぽちも感じやしないさ」


「ん・・・」


「ま、あんな奴のことは忘れて、元気出しなよ」


「・・・ん」


「早く忘れて、素敵な人見つけてさ」


「・・・」


「ね?」


「・・・うん」









ありがとうと、頭を下げて、目に浮かんだ涙をぬぐいながら

微笑んで帰っていく女の子の背を見つめながら、不二はポケットから携帯を取り出すと

『終わった』の一言だけをメールで送信した。

すぐに『ご苦労さん』の一言が返ってくる。

それを心底うんざりしたように睨んでから、手荒に携帯を畳むと、

ポケットに突っ込んで帰路につくのだった。
















自宅前を素通りして、その少し先にある豪邸へ入っていくと

恭しく頭を下げる使用人たちに完全無欠の笑顔を向けながら

慣れた様子で不二は奥にある一室へと向かったのだった。



「おい!」

大きな声と共に、その部屋に入ると、不二は中に居るはずの人物を探した。


「んだよ」

部屋の主は面倒くさそうに呟いてから、寝そべっていたソファからゆっくり身を起こした。






「金輪際、君の節操なしの下半身の尻ぬぐいに、俺を巻き込むな!」

不二は殴りかかりそうな勢いで、不敵な笑みを浮かべている男に突っかかっていった。


「いいじゃねぇか。どうせ暇なんだろ?」


「君みたいなバカに付き合わされる俺の身にもなってみろ。俺は十分に忙しいんだ!」


「いつかみたいになっちまったらそれこそ余計ややこしくなるんじゃねぇの?」


「それは君の勝手だろ、刺されようが、訴えられようが、俺はもう知らない」


「なんだよ・・・てこずったのか?」


「いや、今日のは物分りのいい子だった」


「だったら・・・」


「煩い!」


「・・・んだよ・・・」


「誰と関係しようが、誰とどうなろうが、もぉガキじゃないんだからな。

それは君の勝手だ。その結果で使い捨てみたいに相手を変えて、

その相手が自殺騒動起こそうが、妊娠だとか言って騒ぎたてようが、

そんなの俺の知ったことじゃない。

どーして俺が、忙しい合間を縫って、君が切った女に話をつけて

回らなきゃいけないんだ」


「お前だからじゃねぇか」


「冗談じゃない。うんざりだ!一体これで何人目だと思ってる?」


「さぁな、いちいち数えてらんねぇよ」


「だろうな。俺もバカらしくて途中で数えるのやめたよ!」


「ふん・・・最近あれか?週一ペースになってきてたからか?」


「関係ない。月一でも年一でも、もうこりごりだって言ってるんだ」


「何をそんなイラついてんだ?」


「自分で考えろ」


「っつーかさ。お前だってたいがい使い捨ててんじゃねぇ?」


「お生憎さま、俺は景吾みたいにヤリ逃げ男じゃないからね。

避妊もきちんとしてるし、後腐れない綺麗な別れ方してるし。誰にも迷惑なんかかけてない」


「ふんっ。向こうが勝手に寄ってきて、抱けっていうからじゃねぇか

ちょっと情けかけてやって、逆ギレされんのもうぜぇんだよ。

どーせ、俺様の見てくれと、金が目当てなんだろうがな」


「それでも受け入れるのは君だろ。分かってるなら少しは考えたらどうだ?

兎に角、今後一切、こういうことを振るのは、他の奴にしてくれ」


心底嫌そうな顔でじっと跡部を睨んでから、不二は踝を返した。


「もぉ帰るのか?」


「他に用はない」


「そういや、こないだの女どうした?」


「人のお楽しみ中に、いきなり部屋に入って来て、『こいつに用があるからお前は失せろ』って

放り出したのは景吾だろ。しかも万札投げつけてさ。

お陰で『あんな失礼なお友達がいる人とは付き合えないわ』ってさ。

結局そのときの用だって、君の別れ話の清算に行かされたんじゃないか。

挙句、ややこしいことになって、君とは別れるけど、俺に付き合ってくれとか

慰めてくれとか。それをあの子に見られてて、『もぉ新しい女?』とか嫌味たっぷりにさ。

マジ、ウザイったらありゃしない」


「鍵かけとけよ」


「そういう問題じゃない。っていうかさ、勝手に合鍵作ったのそっちだろ!

俺はちゃんと、確かに鍵はかけてたよ」


「そぉだったか?」


「白々しい」


「ま、いいじゃねぇの。そうか・・・別れたのか」


「君がそうさせたんだろ!」


「じゃ、お互い、今はフリーってわけだ」


「今この瞬間はね。どうせ君は一日だってもたないだろ」


「そうだな」


「それで、新しい相手を見つけたって、また一週間もちやしない・・・

『一生やってろ、バカ』って感じだな。俺は俺にふさわしい相手と

君とは全く違う、普通の恋愛をする。鍵も変えるし、Hは家ではしない!

とにかく、俺を君のいざこざに巻き込むな。そして、俺の邪魔をするな!」


珍しく、息つく暇もないくらい、不二の剣幕は凄まじく、

跡部は苦笑いを浮かべてそれをだまって聞いていたのだった。




















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