答えは“阿吽”















ここ最近、ジローが無口なのは、決して、眠いからではない。

むしろ、目が冴えて、ぶっちゃけ、眠るどころではないのだ。

頭の中には、いつも同じ疑問が浮かんでは消える。

まるで水面に浮かぶ、泡沫のように・・・


いくら考えても、その答えは分からない。


それでも、ジローは、考えずにはいられなかった。



何故って?

それは・・・

大好きな不二に関することだから・・・












素朴な疑問その一・・・




カフェで、皆でお茶してる時、いつもは、ブラックの跡部のコーヒーに、

たまに不二が、ミルクを入れたり、砂糖を入れたりする・・・


しかも、ある時は、コーヒー自体が、紅茶だったりすることもある。

当然、コーヒーがブラックの時や、紅茶がストレートの時は、

不二は、最初っから、何もしないでいる。

跡部は、オーダーなんかしない。いつも不二が二人分をオーダーする。

それが熱いときもあれば、冷たい時もある。



そして、跡部は、いつも黙ってて、不二から差し出されたものを、

満足気に口にするのだ・・・


跡部がいつも不二の隣に座ることは、絶対。

そして、跡部の手元へいく前に、オーダーしたものが、

手前の不二を経由することも、何時もの如し・・・

が、問題は、その過程・・・



最初は、全然、気にもならなかった。

けど、一度気になりなりだすと、それはもぉ・・・止まらない。

誰も何も言わないのか、わかっているのか・・・

だから、今更聞くこともできないのだ






素朴な疑問そのニ・・・


例えば、部活の最中でもそう。


休憩時間に、跡部が、不二のところへ向かうと、天使の微笑みで、

不二は跡部を迎え、ラケットを受け取りながら、タオルを手渡す。

そして、空いた手で、跡部は不二が口にしていたドリンクを、

当然のように、今度は自分が口にする。


それがたまに、ドリングが先だったりすることがあるが、

それでも、跡部は何も言わずに、不二の行動に満足しているようなのだ。







素朴な疑問その三・・・



例えば、ミーティングの最中。

普段、跡部は、メモなんてとらないし、メモを見ながら話をすることだってない。

でも、ふっとした時に、隣に座っている不二が、ペンを差し出したり、

ノートを開いて渡したりしてる。

副部長は忍足なのに、それでも、跡部は、反対の隣に居る不二と

やり取りすることの方が断然多い。








そんなこんなで、素朴な疑問は、

日々、増殖していって、数えだしたらキリがないくらいになっていた。








まるで、跡部の「今は、どうして欲しい」「今日は、こうして欲しい」

という心の声が、不二に聞こえているかのように、不二の跡部に対する行動は、

ごくごく自然で、ジローには考えれば考えるほど、不思議で仕方なかった。














「はぁ・・・」溜息をつくジローに



「どないしたんや。お前が、溜息つくなんか、めずらしいやん」と忍足が声を掛けた。



「なぁなぁ、忍足。」



「何や?」



「どーしてさ、跡部は、不二のやることに、何にも言わないんだろ?

どーして不二は、跡部のして欲しいことが、何も言わないのに、分かるんだろ?」




考えが行き詰まり、頭が飽和しそうになっていたジローは、

タイミングのいい、忍足からの投げかけに、素直に疑問を口にしてみることにした。







「何や、そんなこと考えて、溜息ついとったんか?」



「だってさ、すっげー不思議だもん」



「それは、俺にかて、分からんわ。けど、あいつらには、お互いのことが分かるんやろな」



「俺さ、今日、不二といる時にさ、次は、不二は、どうしたいのかなって、

考えてたんだけど、全然当たらないんだ。すげーショックだった」



「不二は、難しいやろ・・跡部でも、分からんて言うてる時、あるくらいやからな」



「そうなの?」



「そおや。けど。ほんまのとこは、どうなんかっちゅーのは、よぉーわかっとるみたいやけどな」



「やっぱし・・」



「落ち込むことないって」



「落ち込むよ〜。俺、不二のこともっと分かりたいもん」



「努力はしてみてもええとは思うけど・・・跡部には、敵わんやろなぁ・・・」



「あ〜ぁ。俺も、不二と幼馴染がよかったよなー」



「せやけど、佐伯かて、幼馴染やで」



「あいつは、途中で引越したんだろ?

俺だったら、石にかじりついてでも、絶対一緒にいるって」



「ハハハ・・・さよか・・・せやけど、それは言うてみても

どないもならんのんとちゃうか?」



「むぅ・・・・けど、努力はしてみるよ」













と、部室のドアが開いて、跡部と不二が、話をしながら入ってきた。



「でよ・・・あン時の・・・」



「あぁ、これだろ?」



「ん?あ・・・そうだ」



「ついで、にこっちの資料も、揃えてみたけど?」



「助かる」



「で、これが昨年度の分」



「ん・・・」



「ひな型は、昨日作っておいたから、数字だけもらえたら、次の議会までには仕上げられる」



「そうか・・・」











繰り広げられるのは、まるで熟年夫婦の如くの阿吽の会話・・









苦笑いをする忍足と、一瞬、ジローは目が合った。













「はぁ・・・」と、ジローの盛大な溜息が部室にこだまする。









「ん?どうかした?」

二人の存在に気づいて、声をかける不二に




「なんでもあれへん」と、忍足は、答えた。









「答えはあれや・・・ジロー。阿吽の呼吸・・・っちゅーとこやな」


忍足の言葉に、謎が解けたような、

そう思いたくないような・・・



複雑な思いを抱えたまま、ジローは黙って頷くのだった・・・




















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