青瓷色の華@

















穏やかな日差しが差し込む休日の朝

優しく響くピアノの音色に、耳を傾ける老婦人が一人・・・

満足げに、笑みを浮かべながら、奏でられるお気に入りの曲にご満悦の様子だった。



「本当に、長太郎はピアノが好きなのね」

曲を弾き終えた、可愛い孫に向かって、彼女は感心したように呟いた。




「この道を選んでなければ、間違いなく、ピアノを選んでいたと思いますよ」

照れ笑いをしながら、長太郎は祖母の傍へと向かった。


「今からでも間に合いそうだけれど・・・」


「いえ、僕は自分でこの道を選んだんです。

それに、こうして、好きな時に、好きな曲を、好きな人のために弾くのが

一番楽しいと分かりましたから・・・純粋に好きなだけの音楽を生業にはできませんよ」

長太郎は祖母に説明をした。




「そんなものなのかしらね・・・」


「はい、そういうものですよ」


「少し前に、今の貴方と同じようなことを言ってた子がいたわ・・・」


「へぇ・・・そうなんですか」


「えぇ。その子は音楽の道を選んではいるけれど、本当に純粋に、心から音楽が好きで、

そんな思いや、自分の気持ちを一番表現できるのがピアノだと言っていたわ。

コンクールやコンテストで賞をもらうよりも、たった一人、その人の為と思って演奏し、

その人から喜ばれるほうがいいって・・・」


「それは凄いですね・・・僕も会ってみたいです」


「そうね・・・貴方がこちらにいる間に、ぜひ、一度お招きしましょう」


「楽しみです」







鳳貿易の長男、鳳長太郎は、大学を卒業し、父の後継となるべく、

その補佐につきながら、業務を学んでいた。


家族思いの彼は、ドイツで一人暮らしている祖母の元へ毎年訪れていたのが、

社会人になって、なかなか時間がとれずにいた。

そこへ、ドイツへの研修を兼ねた三ヶ月の出張を言い渡され、

祖母の家で世話になっているのだった。




父はチェロ、母はバイオリン、祖母はフルートと、家族全員が楽器を嗜む鳳家では、

長太郎が幼い頃はよく、休日に一家で一緒に演奏したりして、時間を過ごしたものだった。


病気がちだった祖父が他界し、若い頃に、共に過ごした思い出のある地で

過ごしたいという祖母がドイツに移住してから、それはなくなったが、

長太郎は時間ができると、いつもピアノの前に座っていた。




祖母と話をした一週間後のその日、

長太郎が楽しみにしていたその人物との対面が実現したのだった。







「はじめまして。不二周助です」





祖母に案内されてやって来たのは、小柄で細身の綺麗な青年だった。
















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