しょうがないですね・・・
「あ、姉上・・・」
「おや、新八・・・」
甘い甘い香り立ち込める一角・・・
姉弟は、意外な場所で、ばったり出くわしたのだった。
「甘いものはダメだったんじゃなかったの?」
「それはそうなんですが・・・」
「そんなに沢山・・・あなた、とうとう決心がついたの?」
「え?」
「あの人に保険金掛けて、その致死量にも値する糖尿の敵を、しこたま食べさせて、
がっぽり・・・」
「何言ってんですか!」
「当然、掛け金はあの人の金で、受取人はあなたなんでしょうね?」
「姉上っ!」
「あら?違ったの?」
「違いますよ・・・もぉ・・・これは、神楽ちゃんと、定春の分も入ってるからです」
「何だ。そうだったの・・・」
「残念そうに言わないで下さい。それより、姉上こそ、どうなんですか」
「あぁ、これね。今度こそ、終わらせてやろうと思って・・・」
「え?」
「中にしこたま火薬を入れるのよ。いくらあいつでも、これならきっと上手くいくわ」
「死にますから!!」
「当たり前でしょ。そうでなきゃ」
「よしてください・・・もぉ・・・」
「だったら、あなたが変わりに食べる?」
「嫌です!何言ってんですか。もぉ。いい加減にしてください」
「その台詞はあいつに言ってやって頂戴」
「姉上っ!」
荷物を手に、去っていくお妙を新八は、大きな声で呼び止めた。
が、ちらりと振り返って、凍てつくような目線を投げて、
お妙は一言も言わず、去っていった。
『あの目は・・・本気だな・・・』
新八は矛先の向けられている某男の生命力に思いを馳せながら、
お妙の後姿を見送ったのだった。
「何してるアル?」
「わっ!」
最後の仕上げと、綺麗にラッピングをしてるとき、不意に背後からかけられた声に、
新八は飛び上がるように驚いたのだった。
「神楽ちゃん・・・もぉ、驚かせないで下さい」
「危険なくらい、いい匂いアルネ。女心をくすぐるヨ」
「何言ってんですか」
「けど、銀さんには、死を呼ぶ匂いアルネ」
「神楽ちゃん!」
「今日は何の日アルか?巷の婦女子が騒々しかったヨ」
「今日は、バレンタインデーと言って、お世話になった人に、
チョコレートを送る風習があるんですよ」
「へぇ。そうアルか」
そう言うと同時に、神楽は「ん」と言って手を出した。
ガックリ肩を落として、呆れる新八だったが、気を取り直して
できたばかりの包みを手渡した。
「重いアルね」
「奮発して、1キロのチョコで作りましたから。これは、定春の分です」
「流石新八、よく分かってるネ」
「っていうか。神楽ちゃん、僕が一方的にお世話になってるみたいに
思ってるでしょ」
「え?違うアルか?」
「はぁ・・・・っ。もぉいいです。期待したぼくがバカでした」
「こんなことで、シャイに落ち込まないアルよ」
「違いますって!!」
「お、早く一緒に食べてこようっと!」
重い包みを手に、神楽はとっとと出て行ったのだった。
「なんだ?」
「あ、銀さん・・・」
「チョコレートパフェの匂いがする・・・」
「あ・・・あの・・・」
「お前・・・」
「銀さん・・・」
甘いムード漂うかと思いきや
「一人で食いやがったな!!!」銀時が木刀を手に物凄い形相で新八をにらみつけた。
「ちょっ・・・」慌ててそれを制する新八。
危うく紙一重のところで、なんとかそれを制することができたのだった。
「んだよ・・・」
新八から手渡された箱を手に、銀時はじっとそれを見つめたまま静かに呟いたのだった。
ローカロリーのチョコで作られた超絶ラブリーなハート型チョコ・・・
「そういや、神楽の奴にもやったのかよ」
「あれは、友チョコです」
「何だ?それ」
「本命チョコじゃなくて、友達にあげるチョコです」
「へぇ・・・で?」
「で?って・・・」
「こりゃなんだよ」
「何って・・・銀さん?」
「んだよ」
「そんなこと言う人には上げませんっ!」
「ちょっ・・・まっ・・・待てって!」
飛び掛ってくる新八を制した銀時は、自分を睨み上げる新八の目に
うっすら涙が浮かんでいるのを見て、はっとした。
「嘘だっつーの」
唇をかんだまま、新八は尚も、銀時を睨んでいた。
と、ふっと優しい笑みを浮かべた銀時が、新八の頭に手を置いて、
クシャとした。
え?と表情を崩した新八の唇に、そっと銀時のそれが重ねられた。
「んっ・・・」
「さんきゅ。新八」
「銀さん・・・」
素直に愛を告げられない男と
素直に喜べない男・・・
不器用な者同士が
ようやく素直になった頃・・・
某組局長の口から、盛大な花火が打ち上げられたのだったとさ・・・・
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